東京卍リベンジャーズ
昨年話題になっていたときから、自分の好きなタイムリープものということで、ずっと読んでみたいと思っていたこの作品を、最新巻まで一気に読んでみました。
率直な感想
正直なところ、あまり自分には刺さりませんでした。
主人公の武道やヒロインの日向には好感が持てるものの、それ以外のキャラは軒並み、「いや、いうてもこいつら所詮ヤンキーやしな…不良やしな…」という思いがどっか邪魔して、素直に感情移入できませんでした。
いや、それ言ったらヤンキー漫画ってジャンル自体が合わないんじゃ、って思われるかもしれないんですが。
まぁ、確かに思い返せばヤンキー漫画って今まであんまり読んでこなかった。
でも、数少ない読んだ中で言うと『今日から俺は』『湘南純愛組』は面白かったんですよね。
『今日から俺は』はギャグ漫画だからまぁ除外するとして、『湘南純愛組』と『東京卍リベンジャーズ』の違いは何か。
『湘南純愛組』は、抗争もありつつも、主題(メインテーマ)はあくまで「青春」なんですよね。
「青春」がテーマだから、主人公が不良=ワルだとしても、ワルにはワルの青春がある、と、むしろそのピカレスクロマン的な儚さに惹かれて感情移入できる。
対して『東リベ』はメインテーマが抗争(バトル)なんですよね。
青春みたいな目的のないドンチャン騒ぎではなく、明確にゴールがあってそのために命懸けの真剣勝負をするタイプの漫画。
バトルには大義が要る。通常のバトル漫画は「世界を救う」のような大義名分がありますが、ヤンキーの抗争にはそれがないんですよね。
主人公の武道には「恋人の命を救う」という明確な大義名分があるから感情移入できますが、周りのキャラクターにはそれがないから、いくらカッコいいこと言われても、所詮、不良=悪人どもの内輪揉めでしょ、と思ってしまう。
人が死にすぎ
人が死にすぎなのも感情移入できない要因の一つでした。
いや、ヤンキー漫画でこんなに簡単に人殺す漫画他にある!?
『湘南純愛組』も刺激的な漫画でしたが、その辺一線は越えてなかった気がします。
死者が出たとしてもバイク事故とかで、抗争の中で明確に殺意を持って相手を刺し殺したり、殺人を犯すキャラクターはいなかった気がする。
東リベはバンバン殺すもんなぁ…。
それがまた「たかが内輪揉めで平気で殺人を犯すクズ悪人ども」みたいに映ってしまって、感情移入度を下げる要因になってしまった。
主人公、武道の魅力
とはいえ、やっぱり友のため、仲間のために男が拳を振るう姿はカッコいいです。
上記の理由で感情移入度はそれほど高くならなかったとはいえ、この時代に、これほど真っ直ぐに、裸一貫で勝負する男たちを描いた漫画があるのが凄い!
特に、主人公の武道の、何度殴られても諦めずに立つ姿はカッコいいです。
勿論、彼には、ここで引いたら、自分の恋人が、無実の人間が、死ぬほど性格の良い女の子が、無惨にも死んでしまうから引けないっていう理由はあります。
が、それだけでは乗り越えられないほど強い敵、どうしようもない状況、耐えられない痛みに、絶対に折れずに立ち上がり続ける姿は、めちゃめちゃカッコいいし、勇気をもらえます。
主人公が強くならないのもいいですね。
ずっと喧嘩は弱いまま。だけど自分より遥か格上の相手に立ち向かっていき、ボコボコにされるけど、それでも倒れない。その姿で、大物たちの心を次々と動かしていく。
この漫画は、主人公武道のタフネスさ、弱いのに絶対諦めないカッコよさを堪能する漫画だと思います。
令和のヤンキー漫画
この時代にヤンキー漫画がこれだけウケてるのは意外でした。
ヤンキー×タイムリープっていう新しいジャンルだし、令和の漫画だし、ヤンキー漫画と言ってももっと冷めててスタイリッシュなヤンキーが登場する漫画だと思ってました。
蓋を開けてみたら、昭和もびっくりなゴリゴリのド根性ヤンキー漫画だったし、昭和のヤンキーも逃げ出すほどエグくて血みどろなヤンキーの話でした。
これがこの時代にウケるんすねぇ…!
皆が良いと思う物は、流行り廃り関係なく、いつの時代も誰にでも良いと思われるということなんでしょうか。
はたまた、レトロブームのようなもので、その古さが今は逆に新しく映るのでしょうか。
何にせよ、自分達の時代に熱く盛り上がっていた価値観が、今の若い人にも受け入れられているのは、嬉しい限りです。
総じて
前半文句ばかり言ってしまいましたが、古き良きヤンキー漫画特有の熱さと激しさを持ち、好感度の高い不屈の主人公に勇気をもらえる、そんな漫画でした。
ただ、タイムリープもの特有の伏線回収やロジカルな話の作り込みみたいなものはあんまりないので、そこを期待しては読まない方がいいです。
タイムリープはあくまでおまけというか舞台装置にすぎなくて、この漫画のジャンルはやはり「ヤンキー漫画」なので。
あと少しで最終回のようなので、完結したらまた最後まで読みたいと思います。