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【読んだことない人へ捧ぐ】それでも町は廻っている が面白い3つの理由 その②

それでも町は廻っている

 

こちらの記事の続きです


 

 

② 1話の中に仕掛けられている謎解きと見事なオチ

さて、前回は、作品全体としての話の前後のつながりや伏線の散らばりがすごい!って魅力を取り上げたけど、『それ町』は別に他の話とのリンクなんか無視して、1話1話を独立して読んでも、ちゃあんと面白いように描かれている。

 

なぜなら、たった20Pという短い1話の中でも、謎解きと伏線と見事なオチがきちんと仕掛けられているからだ。独立した1話という短いスパンで見ても、作者は読者に挑戦状を叩きつけてくる。

 

それ町』の1話がどのくらい粋に作り込まれているかは以前も書いたけど、とにかく1話1話の話の作りが面白い。

・作中にさりげなく描かれた台詞のやり取りや何気ない描写を、うまく最後のオチに持ってくる。

・最後の場面の一部だけを冒頭で見せて、読者に結末を連想させておきながら、実際は全く違った結末が待っている。*1

・肩透かしだけど平和的なオチになって、めでたしめでたしだと思ったら、やっぱりもう一捻りホラーなどんでん返しが待っている。

・結末をあえて描かず、中盤の描写から結末を推理できるようにしておいて読者の想像に委ねる。

とにかく『それ町』の話はどれもこれも一筋縄ではいかず、読んでて思わず「おぉ」と唸るものばかり。

 

他にも例えばこんな仕掛けがある。

第18話『穴』、歩鳥が宇宙人に出会う話。白い宇宙人と黒い宇宙人が戦っていて、言葉が宇宙語だから何を言っているのかわからないけど、どうやらやりとりから推察するに黒い宇宙人が悪者で、白い宇宙人は正義の味方っぽい。戦いの結果、黒い宇宙人は倒されて、白い宇宙人は飛び去って行った。後日、宇宙人が残していったアイテムを使って、先の戦いで空いた道路とかの穴を修復する歩鳥と先輩。これで一件落着、よかったよかったと安堵する2人の後ろで、道路の穴だけでなく、倒された黒い宇宙人も復活している様子が描かれてジ・エンド。

話は2人が背後の宇宙人に気付く手前で終わっていて、この話も第110話と同じく読者に結末の想像を委ねる上手い終わり方だ。話を読んでいる限り復活した黒い宇宙人は悪者なんだから、2人はこの直後殺されちゃうんじゃないの!?え?どうなったの!?それとも現実的な日常漫画にあるまじきSF話だったけど、結局夢オチだったの??と、結末はわからずじまい。

 

 ↑ 宇宙人は宇宙語で喋っているので何を言っているのかわからない

 

しかし、この話の直後には宇宙語の翻訳表が付いていて、それを使って宇宙人のやりとりを翻訳してみると、実は白い宇宙人の方が犯罪者で、黒い宇宙人の方こそ正義の味方の宇宙警察だったとわかるのだ。つまり2人の背後で復活した宇宙人は宇宙警察の善人だったから、2人はその後の話でも無事だったってワケ。*2

これはわざわざ翻訳表を使って宇宙語を翻訳してみた人でないと絶対に気付かないオチだ。

 

1話1話が独立したミステリーでありながら、①で示したように作品全体が巨大な一つのミステリーでもある。色々な角度から色々な楽しみ方ができるのが、『それ町』という漫画のすごいところだ。

 

 

③ 何も考えずにのんびり読める明るくて人のいいキャラクターたちの日常劇

さて、ここまでは細部まで注意深く、どちらかというと穿った読み方が好きな人向けの魅力を解説してきたけど、『それ町』はそういう人たちだけが楽しめる漫画じゃない。

 

「日常系」の漫画が好きな人っていうのは、魅力的なキャラクターたちの何気ないやりとりや、楽しい会話劇を、頭からっぽにして何も考えずにのんびり楽しみたい!漫画くらい難しいこと考えずに読みたいんじゃ!癒されたいんじゃボケー!という人が多くいると思う。

それ町』は、そういう人が読んでも、そんな欲求が満たされるように、ちゃあんと面白おかしく楽しく明るい日常漫画として描かれている。

 

主人公の歩鳥がまず明るくてポジティブで天然ボケで読んでて楽しい。天然ボケでアホでズレててトラブルメーカーなのに、推理力は高く文学的知識は豊富で頭がいいという、漫画のキャラクターとしてはなかなかいない二面性的な魅力を持っているキャラクターだ。この歩鳥を見ているだけでも、まず読んでて楽しい。

 

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 ↑ 歩鳥と町の人々のアホなやりとりを見ているだけでもなかなか楽しい

 

歩鳥を取り巻く人々もなかなかに強烈だ。商店街の婆さんやおっさんたちはインパクトの強い曲者揃い、歩鳥のツッコミ役に回ることの多い高校のクラスメイトや先輩たちは妙に人間臭くてリアリティがあるし、小学生とは思えない賢さを持つ弟やぶっ飛んだ妹も見所の一つだ。

これら強烈な面々が歩鳥と終始漫才劇を繰り広げるから読んでて全然飽きない。商店街らしい人情話や、②で示したような思わず「うまい!」と言ってしまう見事なオチが待っている話までバリエーションも豊富だから、別に細かいところまで注意深く読んだりなんてせずに、ただただ頭をからっぽにしてワハハと笑いながら読んでもめちゃくちゃ楽しめる漫画でもある。

 

明るく楽しいキャラクターがテンポよく繰り広げる漫才会話劇が好きな人なら、両手離しでオススメできる漫画だよ。

 

 

まとめ

さて、まとめると、

何も考えずに楽しいキャラクターの漫才劇をワハハと楽しんでもいいし、

1話1話の中に仕掛けられた伏線や謎解きを注意深く楽しんでもいいし、

作品全体に仕掛けられた各話のリンクや前後の繋がりを探して楽しんでもいい。

読者の好みに合わせて、本当に多様な楽しみ方ができる漫画、それが『それ町』だ。

 

 

長くなりましたが、オススメの漫画です。ぜひご一読を!

 

 

【この漫画を特にオススメする人種】

・さりげなく仕掛けられた伏線やつながりを細々と探したりするのが好きな人。

・逆に、ただただ楽しい会話劇を何も考えずに笑って楽しみたい人。

 

*1:例えば、「家が燃えたー!」って叫んでる場面を冒頭で見せておいて、実際は「ペットの家が燃えたー!」っていうオチだったり。

*2:さらに言うと、このとき黒い宇宙人が手に持っていたハンマーは実は記憶消去装置だったってことが、ずっと後に別の話でわかるようになっている。つまり夢オチなんかではなく、二人は記憶をなくしていたからその後の話でも宇宙人のことなんかおくびにも出さなかったというワケだ。この辺は①で解説した魅力そのまんまで、きちんと全ての話が矛盾なくつながるように作られている。