つまらない漫画はない、合わない漫画があるだけ
この半年で500冊、30作品以上、1~2巻のみのものを含めたら60作品以上の漫画に触れてきた。
その中に、「自分に合わない漫画」はたくさんあったが、「つまらない漫画」は一つもなかった。
これは別に、「この世に"つまらない漫画"なんてない」というような綺麗事を言いたいわけじゃない。
つまらない漫画はこの世にたくさんあるが、それらは流通の間に淘汰されて、自分のような一般人の手元には届かない、という意味だ。
子供とオタクしか漫画を読まず、掲載場所もメジャー誌しかなかった昔と違って、今は漫画を読む人口が爆発的に増え、読者層も多様化、掲載される場所も雑誌からweb、SNSまで無限に広がってる。
当然、漫画の数も星の数ほど増えていて、書店も、漫喫やネカフェも、GEOやTSUTAYAなどのレンタルコミックも、メジャーと呼ばれる作品すら全部は置ききれていない。
電子書籍なら、より幅広い作品を読めるけれど、それこそ無数に掲載されている作品の中からプロモーションされたりレコメンドされたりして我々の目の前に現れる作品は、ある程度売れている作品、向こうが売りたい作品に限られてくる。
結果、自分のような一般消費者が手に取れるような位置にある漫画は、その時点で、この群雄割拠の大戦国時代を勝ち抜いてきた猛者であり、品質が担保されている漫画なんだ。
実際、60作品以上読んだ中で、自分には合わないなと感じた漫画も、完成度自体は高いと感じたし、これを面白いと思う人は沢山いるんだろうなというのはわかる漫画だった。
『五等分の花嫁』とか『嘘喰い』とか『亜人』とか感想ではボロクソに書いたけど、好きな人は絶対めちゃくちゃいるし、合う人にはすげー面白いんだろうなっていうのは、合わない自分にすらハッキリわかるぐらいに、完成度やクオリティは十分に高いものだった。
今「つまらない漫画」に日常的に触れられる人は、なんらかの雑誌を1冊丸々きちんと定期購読している人に限られるんじゃないかな。
クソ漫画ハンターや、漫画に関する職業に関わっている人も触れてそうだけど、そういった人がどうやって「つまらない漫画」と出会うかっていったら、やっぱり雑誌を丸ごと一冊隅から隅まで読むことだと思う。
実際、自分もジャンプを定期購読していたときは、「つまらない漫画」を浴びるように読んでいた。
(ジャンプの短期打ち切り漫画は「つまらない漫画」が本当に多かった)
ジャンプだけじゃなく、他の雑誌でも、短期打ち切り漫画はさすがに「つまらない漫画」も多いんだろうな。
だけど、ジャンプを毎週欠かさず一冊丸々読むことをやめて以来、「つまらない漫画」にホントに出会わなくなった。
今の時代、「つまらない漫画を読めること」は、意外と貴重な経験なんだな。
漫画は結末まで読む必要はない
もう一つの気付きは、漫画は必ずしも全巻、結末まで読む必要はない、ということ。
自分はどんなに合わない、つまらない漫画でも、一度手をつけたストーリーは結末まで知らないと気が済まない性質で、1冊でも読んだ漫画はいつか最終巻までちゃんと全部読まなきゃと思ってしまう。
特に10巻や20巻まで読んで止まっている漫画は、あ〜、あの漫画ちゃんと全巻読まなきゃな〜と、ず〜っと頭の片隅に残り続けている。
けど、その考え方は捨てた方がいいと、今回身に染みて感じた。
今回、『フェアリーテイル』や『七つの大罪』や『キングダム』など、何十巻も続く漫画を完結や最新巻まで読み切ったけど、それぞれその莫大な時間に見合う価値があったかというと甚だ疑問だ。
ラストのオチまで読んだところで、そのオチに至るまでの過程が面白くなかったら、「ふ〜ん、こういうオチか」「わざわざ読まなくても良かったな」と思うだけだ。
そのためだけに、何日もかけて何十巻も読むのは、あまりにも時間がもったいない。
むしろ、『ましろのおと』や『君に届け』、『フェアリーテイル』など、「完結まで読まない方が良かった」漫画すらある。一番面白いところでやめておけば、自分の中で面白かった記憶だけが残ったのに、下手に無理して最後まで読んだせいで、逆に自分の中でのその漫画の評価が大きく落ちてしまった、というケースもある。
完結まで読むべきなのは、その漫画が面白くなり続けている場合のみ。
夢中で続きを読んでしまって、気が付いたら最終巻や最新巻まで辿り着いてしまった、という場合だけでいい。
今回で言うと『あさひなぐ』や『かぐや様は告らせたい』がそうだった。
どちらも30巻クラスの漫画だったが、一回も苦痛や義務感を感じることなく、気付いたら全巻読み切っていた。
「こっから面白くなるかも」という期待も持たない方がいい。
10巻読んで面白くない、自分に合わない漫画が、そっから自分にとって面白い漫画になることは絶対にない。
面白い漫画は1巻からちゃんと面白いし、稀に読んでいくうちに逆転する漫画があったとしても、3~4巻の時点ではすでにその兆候が見えている。
今回で言うと『この音とまれ』や『左利きのエレン』は後から面白くなってきた漫画だったけど、それでも3巻の時点で「こっから面白くなりそう」「まだ続きを読んでみたい」と思わせる兆候は十分にあった。
逆に10巻や20巻までは好きだったけど、一度自分にとってつまらない、面白くないと思ってしまった漫画が、再度逆転して面白くなることもない。
物語の展開上、暗い展開が続いて、読むのがしんどくなる時期はあっても、それは「読むのが辛い」だけであって「面白くない」わけじゃない。
漫画的にちゃんと盛り上がりがあるはずなのに、つまんないな〜面白くないな〜と感じてしまったら、そんときはもう潮時だ。それ以上読んでも何も得るものはない。
人間、一度興味を失ったものには二度と興味は持てない。
元カレ・元カノとヨリを戻すのが、新しい恋人を作るのより遥かに難しいのと似ているかもしれない。
自分はこの先『ワンピース』の結末がどうなろうと、きっとどうでもいいと思ってしまうんだろうな…。そう思うと少し寂しい…。
あと「友人とその漫画について語れる」という副次的な効果についても、全巻結末まで読む必要は全くない。
10巻20巻読めば、その漫画の話題には十分ついていける。
それに、その漫画の話をするときに、終盤や結末の話になることはほとんどない。
40巻以上続いている長寿漫画の場合は特に。
「話題についていく」という目的の場合でも、せいぜい10巻読めば十分だ。
損切りは大事だ。
自分も、今頭の中に大量にある「この漫画、結末までちゃんと読まないと」を全部追っ払わねば。
宇宙兄弟、ちはやふる、バガボンド、ヴィンランドサガ、ガンツ、ヒロアカ、ブラクロ、銀魂、はじめの一歩、アオハライド、僕等がいた、五等分の花嫁…。
いうて再読はするやつはするだろうけど、読むのがしんどくなってきたり、つまらなくなってきたなと感じたら、早めに手を引くことを心がけよう。
苦痛や義務感になったら意味がない。
楽しいから漫画を読んでるんだから。