この度、2年ぶりの連載再開が決定した、頭脳戦の最高峰漫画、『ワールドトリガー』。
今なら、第1話から毎日2話ずつ、無料で読めます!!
さて、先日解説した魅力に加えて、今日も3つの観点から解説していきます。
作品解説
2013年に週刊少年ジャンプで連載開始された、SFアクションバトル漫画。既刊18巻。異世界からの侵略者「ネイバー」と、彼らから街を守る防衛組織「ボーダー」との戦いを描く。
① 全てのキャラクターが最善手を取りながら動く漫画
さて、第1の魅力については先日たっぷり語ったので、それを見てもらいたい。
あらゆるキャラクターが詰め将棋のように最善手を打ち続け、敵も味方も作戦と戦術で戦い抜く。
加えて、交渉事や駆け引きなど、バトル以外の盤外戦術でも、全てのキャラクターがロジカルにクレバーに動いていく。
とにかくクレバーな頭脳戦が魅力の漫画だ。
② 弱くても頑張る主人公「三雲 修」
そんなワケで気持ちの強さや作者の都合で物語が動かないから、この漫画はとにかく主人公に優しくない。なんせ他の漫画なら必ずあるはずの「主人公補正」ってもんを、三雲君は一切持っていないのだ。主人公なら持っているはずの幸運、才能、そんなものは三雲君には一切ない。
三雲君はとにかく弱い。まず、戦士としての戦いの才能がない。トリオン*1量も少ないし、武術的な立ち回りもあまり上手くない。どちらかというと作戦や策略で何とかしていくタイプだけど、IQが180あるズバ抜けた天才とかかというと全然そんなことはない。平均よりちょっと頭がいいくらいだ。当然努力はしているが、この漫画では全員がちゃんと努力しているのでアドバンテージにならない。
他の漫画なら、それでも主人公に有利な見えない力が働いて八面六臂の活躍を見せたりするもんだけど、残念ながらこの漫画にそんなものはない。主人公だろうと、格上の相手に囲まれて作戦が少しでも甘ければ何の見せ場もなく一瞬で退場します。
↑ 試合開始直後に敵狙撃手に撃ち抜かれ何の見せ場もなく一瞬で退場する三雲君の図
それでも、そんな自分の弱さを自覚しながら、何とかしようといつも頑張り続ける三雲君の姿がすごい応援したくなるんだよね。登場人物たちも同じ気持ちなのか、三雲君の周りには次第に人が集まり始める。*2主人公補正はないけど、主人公気質ではあるから、徐々に人望が募ってくるのかもね。
才能や血統や特殊能力に恵まれまくったジャンプの主人公たちの中で、最も「弱い」主人公、三雲 修。彼がその逆境と不運にどう立ち向かっていくのか。この漫画の大きな見所の一つです。
③ ボーダーのシステムが生み出す模擬戦の面白さ
この漫画は敵との本番の真剣勝負よりも味方同士の練習試合の方が面白いという稀有な漫画だ*3。その理由は、この漫画の巨大防衛組織「ボーダー」の最新鋭技術が生んだ、ある特殊なシステムが大きく関係している。
ボーダーの隊員たちは戦闘時、トリオン体と呼ばれるエネルギーで作られた戦闘用の身体に変身し、生身の身体は小さく収納される。トリオン体はいくらダメージを受けても実体に影響はないが、ダメージが大きくなってトリオンが漏れ続けたり、首が飛ぶような実体だったら死亡レベルのダメージを受けると、トリオン体は消失してしまう。そして、トリオン体が消失すると、生身の肉体を危険にさらすことがないよう、緊急脱出(ベイルアウト)といってルーラのように基地まで強制送還される。
↑ トリガーと呼ばれる武器を起動すると、使用者の肉体はトリオンで作られた戦闘用のボディと入れ替えられる。
↑ 頭をフッ飛ばされても生身の肉体には何の影響もない。が、戦闘からの離脱を余儀なくされる。
↑ トリオン体が死ぬと、生身の肉体が危険にさらされないよう、基地へ強制送還される。
これによって何が面白くなるかっていうと、たとえ味方同士の練習試合だろうと腕や足をふっ飛ばしたり首をちょん切ったり胴体を真っ二つにぶった斬るような派手なバトルが幾らでもできるようになるっていうところだ。
これは本当に思いの外面白い!
頼れる味方同士で命を狙い合う真剣勝負を幾らでも無限に描けるようにしたっていうのは、漫画としては本当に画期的なシステムの発明だと思う!
主人公たちの所属する防衛機関「ボーダー」内では、このシステムをフルに使って、来たるべき侵略者との戦いに備えるため、そしてボーダー内でよりランクの高い隊員を目指すため、日々味方同士の模擬戦が行われているんだけど、これが震えるほどめちゃくちゃ面白い。
個性豊かなメンバーたちがあの手この手で相手チームの裏をかいてポイントを奪ってやろうと試行錯誤していく姿はホント見ていて飽きない。繰り返すが、頭脳戦が好きな人には心底オススメできる漫画だ。
ちなみに、こんな死んでも平気なシステムにしたら、本番の戦闘の緊張感がなくなるんじゃ?って思った貴方。無用な心配です。普段腕や首が吹っ飛んでも平気だからこそ、生身の肉体に戻ってしまったときの緊張感はそらぁもうすごいもんになる。そのパラドックスを最大に活かした場面が、中盤に起こる大規模侵攻のクライマックス。ここは作中屈指の名場面だから、ぜひとも堪能してほしい。
さいごに
最後に、自分が好きな『ワールドトリガー』の台詞を3つ、紹介して終わりにしよう。
「勝ち目が薄いからって、逃げるわけにはいかない」
主人公、三雲 修 君の第一話での台詞。これだけ聞くと、主人公としては普通の台詞なんだけど、このセリフを覚えておくと中盤のある場面で大きな意味を持つ。ある人物の成長と変化を大きく象徴した、心に残る名場面だ。
「ぼくが、そうするべきだと思ってるからだ!」
度々登場する、三雲君を象徴する名台詞。三雲君は功名心も出世欲もないし、打算とか長いものには巻かれるとかそういった思考も全くないんだよね。あるのはただ、自分がそうするべきだと思ってるからそう行動する。ただそれだけ。その真っ直ぐな姿勢が、物語の中で多くの人の心を動かしていくんだよね。
「気持ちの強さは関係ないでしょ」
おそらくコアなワールドトリガーファンの間では最も人気の高い台詞。一番人気の台詞が、ぼんち揚げをボリボリ食いながら発せられてる台詞だってのもまたこの漫画の面白いところだ。
ある意味『ワールドトリガー』という漫画を最も象徴している台詞。一見冷徹に見える台詞だけど、この後に続く言葉を読めば、実は優しさから来てる台詞だってことがわかるんだよね。そのあたりの深みも、この台詞と、そしてこの漫画が愛されている大きな理由だろうな。
いかがだっただろうか。『ワールドトリガー』、とにかくオススメの漫画です。
これを機に、読み始めてみてはどうでしょうか。