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【ネタバレ考察】それでも町は廻っている 本当の最終回について

それでも町は廻っている

 

今日は正真正銘ネタバレ考察。

 

一度最後まで読んだ人向けの記事です。

 

 

それでも町は廻っている』の最終回について

読破した人ならご存知の通り、「それ町」の最終回の流れは以下の通り。

 

第128話 嵐と共に去りぬ

9月7日深夜、宇宙人らしき存在と邂逅した歩鳥は、一つの選択を迫られる。明日、関東を未曾有の超巨大台風が襲い、6,000人の死者が出るというのだ。だが、目の前のスイッチを押せば、その台風を消すことができる。しかし、同時に、歩鳥の存在そのものも消えてしまう。元々生まれてこなかったことになってしまうという。「6,000人の死者の中には、自分の家族や友人もいるかもしれない…。でも…」迷う歩鳥。だが、意を決して、ついにスイッチを押すのだった―――。

 

第129話 少女A

9月8日の放課後。「誰かの存在を忘れてないか!?」と、口々に言い合う3-Aの生徒たち。しかし、それは演劇のセリフの練習だった。歩鳥は普通に存在していて、演劇の脚本を書いていたのだ。最後まで書けていないことをタッツンと真田に責められた歩鳥が「良いオチが思い付かないよーっ」と叫び、THE END。

 

エピローグ 『それから…』

数年後、「風ヶ丘飛鳥」のペンネームで文学賞を受賞した歩鳥。亀井堂静は、その受賞式の席で、ついに自分こそが歩鳥の憧れの小説家、「門石梅和」であると打ち明けることを決意する。バラした時の歩鳥のリアクションを怖れる静。そして、受賞式で改めて顔を合わせる二人。だが、先に口を開いたのは、歩鳥の方だった。

「門石先生。ずっと…背中を追いかけて、どーにかここまで来ました。」

そして、『それでも町は廻っている 完』の文字。

 

 

129話の「良いオチが思い付かないよーっ」という最後のコマが、作者が128話の続きが思い付かずに結末をブン投げたエンドだと思った方。それ町読者失格です。この129話は作者のミスリードだ。

ご存知の通り、「それ町」は時系列が全てシャッフルされて描かれている。つまり、掲載順で129話が最後だからといって、129話が128話の続きで最終回というワケではない。128話の続きで最終回にあたるエピソードは、過去に既に描かれている。

 

14巻収録の「第111話 夢幻小説」。歩鳥が自分が存在しない、生まれてこなかったことになっている世界に迷い込む話。128話と続けて読むと、完璧につながっていることがわかる。歩鳥の服装が全く同じであり、新聞の日付を確認するシーンでは9月8日。そして、「そういえば、台風どうなった!?超巨大なやつが南の方から近付いてて…」『台風なんてしばらく来てないけどねぇ』というやりとり。そう、この111話こそが、本当の最終回なんである。

 

はじめてこのつながりに気付いて、128話と111話を続けて読んだときは本当に鳥肌が立った。最終回を普通に中盤の他のエピソードの中に紛れ込ませるなんて、そんな漫画家ほかにいるか!?

 

そしてこの111話のキーになっている存在こそが、門石梅和である。歩鳥の生まれなかった世界では存在しなかった門石梅和。だが、迷い込んできた歩鳥の言葉で、自分は小説家になれるということを知った静が、門石梅和の名で小説を書き始めた瞬間、歩鳥は元の世界に戻るのだ。

 

これは元の世界に戻ったんじゃなくて、世界が歩鳥が存在する世界に再構築されたと見ることもできる。その再構築が起こった鍵こそが、門石梅和なんである。だとしたら、今の歩鳥は門石梅和のおかげで存在しているということになる。そして逆に、門石梅和という小説家も、歩鳥がいなかったら存在してはいなかった。

 

だから、エピローグは静ねーちゃんと歩鳥の話なんである。

 

それ町の最終回についての様々なレビューを見ていく中で、「エピローグが歩鳥と静ねーちゃんの関係性にだけスポットライトが当たっているのは納得いかない。歩鳥と静の関係はそれ町のエッセンスの一つに過ぎないのに、それがメインテーマだったかのように締め括られるのはおかしい」という批判があったが、それは違う と、自分は思う。

門石梅和と嵐山歩鳥は、お互いがお互いの存在を生んでいるのだ。どちらも、お互いがいなかったら存在しえないのである。それこそが、最終回(=128話+111話)の話の筋である以上、あのエピローグになるのは当然だ。

 

歩鳥が町の人々を救い、その人々の一人である静が歩鳥を救い、歩鳥は静の背中を追いかけて夢を叶える。この連鎖が、あまりにも素敵すぎる。

 

最終巻は普通に読んでも面白かったが、このつながりに気付いてから改めて「128話→111話→エピローグ」の順に読むとまた別の感動が押し寄せてくる。最後の歩鳥の台詞、「ずっと…背中を追いかけて、どーにかここまで来ました」も、また違った趣きを持って聞こえてくる。

 

それ町」は本当に良く出来た漫画だ。

計算尽くで話が作られていて、読む度に新しい発見がある。

 

また一から、今度は時系列順で読み直してみたい。

一体どんな発見があるだろうか。