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【漫画】ONE PIECE 〜エニエス・ロビー編は、ウソップが麦わら海賊団の本当の一員になるまでの物語〜 前編

ONE PIECE

 

今や日本一の人気漫画となった『ワンピース』

その中盤のクライマックスである

いや、今となっては 序盤の クライマックスか。

序盤のクライマックスである、「エニエス・ロビー編」

 

事件の始まりであるウォーターセブン編から数えると、

実に10巻以上にも及んだこのエニエス・ロビー編。

ロビンとフランキーという2人ものキャラクターの過去が描かれ、

2人とも新たな仲間として麦わら海賊団に加わった。

また、麦わら海賊団の政府への宣戦布告や、全メンバーの懸賞金の爆上がりなど、大事件も目白押し。

さらに、ロビンの「生ぎたいっ!!!!」という涙の叫びや、メリー号との別れのシーンなど、涙が止まらない感動シーンが多いことでも印象深い。

 

この章では、奪われたロビンを取り戻し、再び仲間に加える、という最終目的が一貫して描かれているため、アーロンパーク編が「ナミ編」、ドラムロッキー編が「チョッパー編」であるのと同じように、エニエス・ロビー編は「ロビン編」であると捉えられることが多い。

 

でも、自分は、ロビンという表の主人公がいる一方で、もう一人、この章の 裏の主人公 として描かれている人物がいると思っている。

 

それが、ウソップ だ。

 

エニエス・ロビー編は、「ウソップが麦わら海賊団の本当の一員になるまでの物語」でもあると思っている。

 

今回は、エニエス・ロビー編はなぜウソップの物語なのか?

エニエス・ロビー編の中でウソップの心境はどう変化していったのか?

それを、自分なりに考察して、書いていきたいと思う。 

 

 

ルフィとウソップの『決闘』

前編の今回、着目していくポイントは、ズバリ、ルフィとウソップの "決闘" だ。

 

ウォーターセブンにて、メリー号の処遇について意見が衝突したルフィとウソップは、決闘の末、ウソップが麦わら海賊団を抜けるという衝撃の結末を迎えることになる。

 

自分が子供の頃、リアルタイムで読んでいてどうしてもわからなかったのが、この部分。

ウソップが麦わら海賊団を抜けた理由だった。

 

ウソップが人一倍メリー号に思い入れがあるのはもちろんわかるけれども、どう考えてもルフィの言い分の方が正しいし、何もチームを抜けるほどのことはなかったんじゃないか…?と思っていた。

ところがそうじゃなかったんである。

ウソップにとってメリー号の件はきっかけに過ぎない。ウソップにとって重要なのは、むしろ チームを抜ける ってことの方だったんである。

 

 

ウソップが抱いていた不安

ウソップは薄々、この船に自分の居場所はないんじゃないか?と思っていた。

化け物じみた強さを持つルフィ、ゾロ、サンジに比べ、自分は弱くて何もできない。

同じ「弱もの仲間」であるチョッパーも、気が小さいだけで実際戦えばルフィたちに肩を並べられるほどに強い。

ナミは例外だ。ナミは戦闘員としては戦力外だが、航海士 という超絶に重要な役割を担っている。ナミがいなければルフィたちはこの"偉大なる航路"を1ミリたりとも航海できない。戦闘員なんかよりよっぽど大事な役割を担っているナミは、ある意味この船で最も必要な存在なのである。

 

ウソップも「狙撃手」というポジションを一応持っているが、今まで麦わら海賊団で「狙撃手」が役に立った場面なんて一度もない。そもそもルフィゾロサンジの三枚看板があればあらゆる敵を一網打尽にできるのだ。遠方からの狙撃なんて、そもそもこの船には必要ないんじゃないか…?

 

 

船大工として

そんなウソップが、「船大工」の役割を代行しながら心の平穏を保っていたのは想像に難くない。「俺は船大工じゃねぇんだぞ」と文句を言いながら、手先も器用だし、自分の故郷の思い入れもあって船に必要な船大工の仕事をしているときは、「自分はこの船に居場所がある」と思えたんじゃないだろうか。

 

だが、船長は「この街で新しく大きな船に乗り換え、ついでに船大工も仲間にする」と言い出した。大きな船になれば流石に自分が船大工の代わりはできないし、そもそも正式な船大工が仲間になればその役割自体が必要なくなる。船大工を仲間にしたいっていうのは前々から言っていたけど、とうとうその話が現実味を帯びてきて、ウソップの焦りは頂点に達していたんじゃないだろうか。

 

 

足手まといな自分

さらにそこにきて、空島で苦労して手に入れた2億ベリーをみすみす奪われるという大事件が起こる。

船での役割がないどころか、足手まといにしかならない自分。

ウソップが手も足も出ずにボコボコにされた相手を、ルフィ・ゾロ・サンジ・チョッパーの4人は赤子の手を捻るようにギッタギタに叩きのめして帰ってくる。

そもそも金の番が自分じゃなければ、2億を奪われることもなかった…。

ウソップ本人が言うように「金の番すらロクにできねぇ」ことが、いよいよ「この船には自分の居場所がない」という気持ちを強くすることになる。

 

 

そして、衝突

そして、そんな状況で勃発したのが、メリー号を巡るルフィとの意見の対立である。

ウソップは、乗り換えられ、置いていかれるメリー号を、自分と重ねてしまった のだ。

 

ウソップがあそこで激昂した本当の理由。

それは、メリー号を置いていくことではなくて、「自分もメリー号と同じようにいつか置いていかれる」という恐怖の爆発だったのだ。

ウソップだって理屈ではルフィが正しいことぐらいわかっている。メリー号は限界で、ここで乗り換えるしかいないことぐらい。でも、メリー号を、弱くて居場所がない自分と重ねてしまった。

 

理屈ではルフィの方が正しいとわかっていても、居場所がなくなった自分が置いていかれる恐怖をメリー号と重ねてしまったウソップは、感情の爆発を抑えることができない。ついに「一味を抜ける。その前に俺と決闘しろ!」とルフィに宣戦布告してしまう。

 

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決闘でウソップが求めたもの

ルフィとの決闘でウソップが求めていたものは何だったんだろうか。

もしもこの化け物じみた強さを持つ船長に、万が一にも知恵と策略だけで自分が勝つことができたなら、まだ自分が船に居た意味があったんじゃないか…? そんな幻想だったんじゃないだろうか。

そんな淡い幻想を抱いて、ウソップはルフィとの決闘に臨む。

ところがそんな幻想は打ち砕かれ、重い現実を突きつけられる。

ルフィの「お前が俺に勝てるわけがねえだろうが!」という一言は、ウソップにとってはあまりにも重い一言だった。

ルフィも、ウソップの幻想を捨てさせるために、諦めさせるためにあえてこの一言を言ったのだろうか。

 

 

前編まとめ

とにかくウソップは、ルフィたちに置いていかれ、捨てられるのが怖かったのだ。何の役にも立たないどころか、足手まといにしかならない自分…。このままではいつか、置いていかれる、捨てられる。いや、そんなことはない!そう言い聞かせてきたウソップだったが、ルフィが「メリー号は置いていく」と言うのを聞いて、メリー号と自分を思わず重ねてしまう。自分もいつか、メリー号のように置いていかれる…!そんな恐怖に襲われたウソップは、そうなる前に自分からルフィたちに別れを告げる。

ウソップは、ルフィたちに捨てられるのが怖くて、自分からルフィの元を去るという選択をしたのだった。

 

ゾロ、ナミ、サンジ、チョッパーは、登場時にルフィが「うちの船にお前が欲しい。俺の仲間になってくれ」と宣言し、そのスカウトの結果としてクルーになっている。

だがウソップだけは違うのだ。たまたま一緒に悪者と戦ったから。たまたま海へ出るタイミングが一緒だったから。俺たちもう仲間だろ?だから一緒に行こうぜ?そう言って一緒に海へ出ただけ。

つまり、ただの なのだ。

だったら、その縁がそれまでだっただけのこと。

元々自分は他のメンバーとは違って、ルフィに必要とされていたわけじゃない。

他のメンバーと違って、「世界一の狙撃手になる!」みたいな夢もない。ただ海へ出て、海賊になってみたかっただけ。その夢はもう十分果たした。

仲間はどんどん強くなっていくし、夢物語だと思っていた「海賊王」もどんどん近づいていく。海賊王のクルー…自分には、荷が重すぎる。何しろ金の番すらロクにできないのだ。

 

そんなウソップが、船を降りてしまったのは、致し方ないことだっただろう。

 

 

次回、

そんなウソップが、麦わら海賊団のクルーとして返り咲くまで。

 

 

ONE PIECE 35 (ジャンプコミックス)

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