オッドタクシー
友人に勧められて一気見しました。
軽く感想を。
動物たちが描く、不思議な不思議な群像劇
気難しいセイウチのタクシー運転手、おおらかなゴリラの医者、優しいアルパカの看護師、不真面目なミーアキャットの警察の兄弟、バズりたいカバの大学生など、動物たちが人間のように社会を形成し、日々を生きている世界。
一匹の猫の女子高生失踪事件を中心に、登場動物たちのそれぞれのストーリーが、奇妙な絡み合いを見せていく…。
というストーリーです。
ディズニーのような可愛い動物たちのファンシーな世界観でありながら、話の中身は、殺人事件、ヤクザ、SNS、汚職警官、ソシャゲ中毒、アイドルの裏側、と、現実的で生々しい話ばかりです。
というか、正直、6,7話ぐらいまで、何の話か全く見えません。
脈絡のないバラバラのエピソードが、淡々と、独立して紡がれていくだけです。
正直、ストーリーに大きな動きを期待しながら見ると、ここらへんで飽きちゃうので、前半は、その不思議な雰囲気と、登場人物たちの皮肉とウィットに富んだ会話劇を楽しむアニメ、だと思って見た方がいいです。
このオッドタクシーの魅力の本質は、この「会話劇」にあったりします。登場人物たちの、妙に皮肉が効いていたり、本質を突いていたり、詩的だったりする会話やモノローグ。これを楽しめる人は、全編通してこのアニメを楽しめると思います。
ミキやダイアンなどの芸人たちが声を当てているキャラクターたちが、またいい味出しています。
普段僕はアニメで声優以外の芸人やアイドルのキャスティングは反対派ですが、今回ばかりは彼らの関西弁の語り口が、この世知辛いアニメの空気感に妙にマッチしていて、聞いててクセになります。素晴らしいキャスティングだと思います。
そんな風にして、動物たちのウィットに富んだ会話劇と、不思議な雰囲気の群像劇を楽しんでいると、7話あたりから話は大きく動いていきます。
そして…。
最終回に待っている大どんでん返し
最終回には大きな大きなどんでん返しが待っています!
明らかになる、衝撃の真実…!
正直、このオチは見事でした。
伏線回収系アニメが大好きな人は、実に好みの最終回になっていると思います。
ただ、僕が好きなどんでん返しは、最終回の"最初"に描かれた方になります。
最終回の"最後"に描かれたどんでん返しは…、
正直、好みが分かれるかと思います。
YouTubeのオーディオドラマは必ず見るべき
今から見るなら、本編と並行して、YouTubeのオーディオドラマを一緒に見ることをオススメします。
このオーディオドラマ、本編で隠されている重要な秘密を本編に先立って匂わせていく作りとなっており、1話ごとにこのオーディオドラマを見ることで、本編の景色が全く違って見えるようになっています。
正直、最初のまだハマってないうちから、1話見終えるごとに約5分のオーディオドラマを差し挟みながら見るのはちょっとしんどいかもしれませんが、絶対に見ることをオススメします。
後々「見といて良かった」って絶対なるんで。
そして、最終回の後、最後のオーディオドラマを最後まで聞くと…!
注意:ここから先、ネタバレあり
さて、ここから先は、ネタバレありで、完走した感想を。
あのラストは後味悪すぎんだろ…。
客観的に評価すると、伏線系サスペンスホラーとしてあのオチは素晴らしいオチだったと思いますが、ハッピーエンド至上主義者の僕には正直キツかったですね…。
なんやかんやあったけど、主人公たちはみんな未来に向かって希望を持って歩み出して、悪党どももみんな捕まって、あぁ、よかったよかった。と、思っていたら、
一番の邪悪、真犯人のシリアルキラーは全くお咎めなしで完全に野放しのまま。
しかもその魔の手が主人公に伸びてきたところで終わる。
という…。
この後、最悪の展開としては、このまま小戸川は殺されますよね。
ポジティブに解釈すれば、間一髪仲間が助けにきてくれて、一悶着あった後、結局和田垣は捕まるかもしれませんが。
どちらにしても物語はまだ全然終わってないワケで。
最終回後半の「あぁ、よかったよかった…!」っていう晴れやかな明るい気分が、完全にどっか吹っ飛んでいって、視聴後に頭に残っているのは和田垣の邪悪な笑顔だけになっちゃいましたよ。
友人には「あれはあくまでオマケ的な要素で、(最終回)前半の回収部分がこのドラマのメインじゃん」って言われましたが、自分、そんな簡単には割り切れんでェ…。あの世界では事実として、あの最後の事柄は起こっちゃってるワケだからね。
最後の人間オチは見事だった!
まぁ、そんなワケで、最後のオチはハッピーエンド派の自分にとっては、なんともモヤモヤが残る終わり方になったワケですが。
それを除けば、最終回のどんでん返しと伏線回収は素晴らしかった!!
いやー、あの人間オチは全く読めなかったですね。
正確に言うと、1話の時点ではそれに近いオチを候補として頭の中に置いてたはずなんですが、幾つかの上手な仕掛けのせいで、その線を完全に切っちゃったんですよね。
特に上手かったのが、ダイアンの2人が演じるお笑いコンビの芸名「ホモ・サピエンス」 。
このコンビ名を名乗っていた2人が実際に登場したら人間じゃなくて猪と馬だった時点で「あぁ、この世界は人間が存在しない世界なんだな」って決めつけちゃいましたからね。
思い返してみれば、ズートピアやビースターズのような「動物で世知辛さを描く作品」でありながら、その両作品に見られる「種族特有の特徴に対する言及」が一切出てこない時点で、おかしいと思うべきでした。
「いいよな、お前ら肉食動物は」「セイウチは牙の手入れが大変なんだよ」「三毛猫より黒猫の方が売れるんだよ、アイドルとしては」みたいな台詞が出てきても良さそうなもんだったのに、一切なかったもんなぁ…。
「俺は何に見える?」「ゴリラだろ」
「この辺ではアルパカはあんたしかいない」
「だって三毛猫じゃん、その娘」
小戸川のこの3つの発言に、登場人物たちが特にリアクションしなかったのは、大きなヒントだったんですねー。そして小戸川が人の顔を覚えたり人混みで特定の人物を見つけるのが上手かったりする伏線にもなっている。ここに気付いたときはゾクッとしました。
そして最大のヒントが柿花の写真。
あれ「いや、シルエットでわかるだろ」って思っちゃった僕は、まんまと術中にハマっちゃってましたねー。
僕らは小戸川と同じ視点で世界を覗いてるから小戸川と同じ感想を抱くけれども、実は登場人物たちが抱いている感想の方が真実だという。
そしてそれが、ラストのオチにも繋がっていく…。
病気が治ったが故に、タクシーに乗ってきたのが "アイツ" だということに、もう気付けない…。
押し入れの猫オチ
押し入れの正体もこのアニメならではのギミックになってて面白かったです。
猫かな?と思わせて、やっぱり猫なんかーい!って肩透かしオチかと思いきや、
猫であるがゆえに、「もしや俺が猫だと思って押し入れに匿っていたのは人間だったのでは…?」という "人間に戻った小戸川にとっては" ドキドキするオチになっているという。
普通だったら、登場人物が何気ない顔をしていて、視聴者がドキドキするオチのはずが、視聴者が何気ない顔をして、登場人物がドキドキするという、逆転現象が生じています。
ここもなかなか興味深い発想でした。
おわりに
前半何の話かわからなくて投げ出しかけたり、ラストの後味の悪さに辟易したりしたけど、総じて、しっかり楽しめた作品でした。
オリジナルアニメって、たまにこういう当たりが出るから、侮れない。
また、面白いアニメがどこかで生まれるのを、楽しみにしています。