にわかじこみの一般人。

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【漫画】重版出来!【感想】

重版出来!

 

 

お仕事漫画の最高傑作!

めっっっっっっちゃくちゃ面白かった…!

ここ数ヶ月で20以上の漫画を読んだけど、間違いなくぶっちぎりで一番面白かった。

単発で感想を書きたくなったのは久しぶりだ。

 

1巻の最初の社長のエピソードで衝撃を受け、

たんぽぽ鉄道の営業の話で泣き、

2巻の印刷所のお姉さんの話でまた泣いた。

以降、1巻に1回は泣いてた気がする。

気付いたら完結までノンストップで読み通していた。

 

ジャンルとしてはお仕事漫画で、主人公は漫画編集者ではあるんだけど、

描かれる職業は漫画家と編集者だけじゃない。

営業、デザイナー、書店員、印刷所、校閲、果てはグラビアの修正のお仕事まで。

漫画や出版を通じて本当に色んな職業の人が描かれる。

 

どんなことをしているのか、どんな流れで仕事をしているのか、何にこだわっているのか、どんなドラマがあるのか、そして、どの瞬間に達成感を感じるのか。

いろんな人のドラマが、熱く、優しく、躍動感あふれる描写で紡がれていく。

コレが本当に毎回毎回魂を揺さぶってくる。そんで毎巻泣いてしまう。

 

我々が日々、何気なく気軽に享受している、消費している漫画やアニメや作品が、どれだけ多くの人の手で、どれだけ多くの情熱や苦労や想いがあって、我々の手元まで届いているのかがわかる。

さらに言うと、この作品の中で描かれているのはあくまで漫画や出版に関わりのあるものだけだけど、世の中にある遍く全ての商品やサービスは、この漫画と同じように、たくさんの人の想いと情熱を経て我々の元に届いているのだなぁと思うと、日々手に取るあらゆる商品やサービスを見る目が変わる。

全てに感動するし、全てに感謝するようになる。

 

そして自分の仕事にも誇りを持てるようになる。

自分も仕事頑張ろうって思える。

仕事へのモチベーションがもらえる。

 

今後、仕事へのモチベーションが下がったら、この漫画をまた繰り返し読もう。

下手なビジネス本より、よっぽど活力をくれる。

 

この漫画を読破した後、日向坂46の新曲『君はハニーデュー』のMVをリリース日に見たら、感動して泣いてしまった。

この新曲のMVをこの日にリリースするために、どれだけ沢山の人が関わっているのか、どれだけ沢山の人がいいものを届けようと情熱を燃やしてきたのか、どれだけ沢山の人がこのリリースの瞬間をドキドキしながら見守っていたのかを想像すると、公開直後から溢れた賞賛のコメントやSNSが自分の事のように嬉しくなってしまったのだ。

 

漫画の中で漫画を描くからこそ生まれる、描写の説得力

この漫画、絵は比較的雑というか、そんなに綺麗な絵柄の漫画ではないのに、どうしてこんなに面白いんだろう、とずっと思っていた。

中盤、高畑一寸というベテランの漫画家の先生が漫画のテクニックを解説するシーンがあるのだが、そこで合点がいった。

 

『重版出来!』は「漫画家漫画」だから、「面白い漫画とはどういうものか」を、全体の構成や、1巻ごと、1話ごとの話のヒキ方、絵の書き方、コマ割り、吹き出しの使い方、果てはフォントや紙質に至るまで、「こうすれば面白くなる」「面白い漫画はここにこだわっている」といった面白さのポイントやテクニックの解説がしっかり為されている。

ということは、この漫画自体も当然、そのポイントやテクニックは全て抑えているということだ。面白くないわけがない。

同じストーリーでも、この話運び、この絵、このコマ割り、この構図だからこそ、こんだけ夢中になれるし、のめり込んじゃうし、気付いたら紙面に引き摺り込まれちゃうんじゃないかっていうぐらいのパワーを感じるんだ。

 

中田伯、安井昇をはじめとした、魅力的なキャラクター

主人公の黒沢心は、漫画的にめちゃくちゃ美味しいキャラクターでありながら、この漫画の「主人公」ではない。

彼女の内面や成長が描かれることはこの漫画ではあまりないし、それは主軸ではない。彼女はあくまで物語のナビゲーターである。

 

この漫画の一番主軸となっているストーリーの主人公は「中田伯」であり、内面や成長が一番描かれるのも彼だ。

とはいえ、上で書いた通り、この漫画は多種多様な職業の人間のドラマがオムニバス的に描かれる漫画だから、中田伯の物語ですら、この漫画に無数に存在するドラマの一つに過ぎない。

 

とはいえ、中田伯の物語の迫力はやっぱり凄い。

この漫画の登場人物って基本的に「いい人」ばかりで、最初嫌な奴や無気力な奴に見えても、最終的にはやっぱりいい人でしたってパターンがむっちゃ多い。

「変人」はたくさん出て来るが、「陰」の気を持つ人物は基本的にはいない。

 

中田は、この漫画の「陰」の部分を一身に担っている。

彼だけがこの漫画で大きな闇を抱えていて、だからこそ彼の描く漫画はパワーがあるし、ひいては『重版出来!』という漫画の中で彼のストーリーは物凄いパワーを放っている。

他のオムニバスのストーリーと交互に描かれることで、「陽」と「陰」のメリハリが付いて、読者はジェットコースターのように揺さぶられるし。

そして、そんな彼が漫画を通じて沢山の人と出会って、徐々に変わっていく様子は、読んでてとても清々しいし読み応えがある。

 

終盤、彼がどんどん丸くなっていくことで、作品自体の読み応えも少々物足りなくなっていくが、それはそれでいい。

最後まで読んだら、やっぱり中田くんには幸せになってほしいって思っちゃうもん。

 

そしてもう一人の主人公とも呼べるのが安井さん。

序盤、いけ好かない無気力社員に見えた安井さんが、中盤以降めちゃくちゃ格好良くなるのがサイコー。

あの新雑誌名発表するシーンは痺れましたよ。

 

読んでて「あまりにも安井さんキャラ変わり過ぎだろ…」と思ってたんだけど、黒沢が全く同じことを五百旗頭さんに言うんだよね。「安井さん変わりました?」って。

それに対して五百旗頭さんが「安井さんは最初から何も変わってないよ」って答えるんだよね。そして心の中で「変わったように見えたとしたら、黒沢の方が成長したんだろうな」って呟く。

 

ここ、ドキッとしたね。

これってつまり、漫画『重版出来!』の世界は、「黒沢の目に映っている世界」が描写されているってことだから。

安井さんが内面的なキャラクターどころかキャラデザまで変わっちゃっているのは、「黒沢の目にそう映っているから」意図的に変えられたものだったんだ。

そう考えると、この漫画って結構最初と最後でデザイン変わっている人って結構いる。

三蔵山先生とか、最初ヨボヨボのお爺ちゃんだったのに、最終巻とか別人のように若返ってるし。

これらは全て、作者の絵柄の変化や、作者の都合で変えられたんじゃなく、「黒沢が成長して世界の見え方が変わった」ことを示していたんだなぁ。

 

なんにせよ、序盤いけ好かない小物だった嫌な奴が、終盤一番頼りになる強キャラになる展開は大好物です。

安井さん格好良いよー。FLOWの企画通す一連の流れは最高でした。

もっと大大大大大大ヒットしてもいい、S級漫画

総じて、コンセプト良し、ストーリー良し、描写良し、キャラクター良し、

熱くて泣けて、明日を生きるエネルギーを貰える、最高の漫画でした。

ドラマ化したし、ヒットしてないわけじゃないけど、もっともっと大大大ヒットしてもいい漫画だよコレ。A級じゃなくてS級でいい。今の位置に甘んじているのが勿体無い。

 

めっちゃくちゃいい漫画なんで、読んでない人はぜひ今すぐ全巻買って読んでみてください!!!!!