神様からひと言
前回おすすめの小説についての記事を書いたら、友人からこのブログをいつも楽しみにしていると言われてめちゃくちゃ嬉しかったので、その友人に向けて今日もおすすめの小説を紹介。
それほどメジャー過ぎず、でも俺の大好きな小説ってどれだろうと考えたときに、ピッタリのものがあったので、今日はそいつをご紹介します。
荻原浩の『神様からひと言』
そもそも 荻原 浩 という作家自体が、それほど知られていないんだけど、この人の書く本はかなり面白いものが多いんだよ!
とにかく文章が面白くて、読みやすくて笑って泣ける作品が多い。普段小説を読まない活字が苦手な人でもスラスラ読めるほど、軽くてテンポが良くて親しみやすい文章を書く人だ。
『愛しの座敷わらし』はめっちゃほっこりするし、『あの日にドライブ』は俺の人生のバイブルだし、『オロロ畑でつかまえて』は腹を抱えて笑った。
そして、今ドラマ「大恋愛」で話題の「若年性アルツハイマー」の実状をリアルに描いた『明日の記憶』は現代に生きる全ての日本人に読んでほしい傑作。*1
一昨年『海の見える理髪店』でようやく直木賞を取ったとき、ファンとしてはどれほど嬉しかったことか。
短編集『押入れのちよ』に収録されている表題作「押入れのちよ」が、短くて笑えるし読みやすいし面白いし典型的な荻原浩らしい作品なので、まずは「押入れのちよ」を読んでみてほしい。これが面白かったら他の荻原浩作品も絶対に気に入るし、逆に面白くなかったら他も止めといた方がいい。低予算短時間で自分に合うかどうかを見極められるので、お得です。
なので、みなさん、まずは「押入れのちよ」を読もう。*2
さて、「押入れのちよ」を読破し、晴れて荻原浩の他の長編小説を一本読んでみたいと思ってくれた貴方。
次にオススメするのが、俺が荻原浩で最も好きな作品『神様からひと言』だ。
とにかく笑って泣ける、痛快で面白い極上のエンターテイメント。
何も難しいことを考えずに、気軽な気持ちでサラサラと読めて、何度も笑えて、最後にはスカッとする、エンターテイメントとしては理想的でお手本のような作品だ。
簡単にあらすじを解説。
【あらすじ】
大手広告代理店から食品会社へ転職したばかりのサラリーマン、佐倉涼平は、入社早々販売会議でトラブルを起こし、「お客様相談室」という名のクレーム処理専門部署へ左遷されてしまう。そこで出会った面々は上司も同僚も一癖も二癖もあるやつばかり。さらに、お客様はそれに輪をかけて面倒で―――。
社会の理不尽と戦う貴方に元気をくれる、笑って泣ける痛快サラリーマン小説!
笑えるシーンはめっちゃ多いんだけど、特に主人公の上司の篠崎が面白い!最初は下品でだらしなくて不真面目で、嫌なおっさんだなーと主人公も読者も思うんだけど、次第に優秀で奥の深い人物だということがわかってくるんだよね。
中盤、ヤクザ相手に室長の名前を叫びながら逃げるシーンは腹抱えて大爆笑したわ。
笑えるだけじゃなく、ドラマ「半沢直樹」ばりにスカッとするカタルシスのある話でもある。
というか、会社の上層部の理不尽と不正に立ち向かい、その反逆を成功させるところはまさに「半沢直樹」そのもの。
ラストの会議室での大立ち回りは、心の底からスカッとすること間違いなし!
腹の底から大爆笑したい人。
心の底からスカッとしたい人。
何も考えずに気軽に読みやすい小説を読みたい人。
そんな人たちには、自信を持ってオススメできる作品です。
実は、この『神様からひと言』は、去年NHKでドラマ化される予定だったんだよね。
ところが、放送直前に主演の小出恵介がスキャンダルを起こし、作品そのものが放送中止に…。
ファンとしては、なんでよりによってこの人がこのタイミングで…、と絶望せざるを得ない悲しい事件だった。
もしドラマ化してたら、もっと多くの人にこの作品の面白さを知ってもらえていたのに。
あと、この小説、タイトルと装丁で損をしているよね。
このタイトルとこの装丁で、大爆笑のコメディ小説だとわかるひとはいないだろ。
むしろ宗教書かなんかに見えるわ。
タイトルは最後まで読めばちゃんと意味があるのがわかるから仕方ないにしても、装丁はどうにかならなかったのか。
デザイナーのセンスのなさが悔やまれる。
とにかくオススメの小説です。
ぜひ読んでみてください。