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【漫画】ブルーロック【感想】

ブルーロック

 

 

今までのサッカー漫画の欠点

自分は今までサッカー漫画を面白いと思ったことがなかった。

『シュート』も『ファンタジスタ』も『ジャイアントキリング』もハマらなかった。

その理由は明確に3つ。

  • 登場人物が多すぎる
  • 戦術が複雑すぎる
  • 得点シーンが少なすぎる

 

まず登場人物が多すぎること。

自チームだけでも11人、コート上の全員を把握しようとすると22人ものキャラクターを覚えなきゃいけない。

読者にスムーズに受け入れられるにはメインキャラを4~5人に絞らなければいけない漫画の世界で、これは明らかに多すぎる。

 

そして戦術が複雑すぎること。

今のサッカーってかなり複雑で高度になっていて、サッカーが好きな人にウケる漫画を描こうと思ったら、サッカー好き以外には敷居が高い、漫画としても複雑なものを描かざるを得ない。

 

最後に、得点シーンが少なすぎること。

サッカーは、90分という長い試合時間の中で、多くても1チーム3点程度しか得点できない。

得点シーンという、スポーツ漫画の中でも最高に盛り上がるシーンを、1試合につきたった3回しか使えないというのは、そもそも漫画として致命的すぎるハンデだ。

 

『スラムダンク』があれだけヒットしたのは、題材が少人数大量得点制であるバスケだったからというのも大きい。サッカーだったら、これほどヒットしなかったかもしれない。

総じて、今までのサッカー漫画は、元々サッカー好きな人やサッカー経験者のための漫画であり、サッカーにあまり興味のない自分みたいな層には、読むのがしんどいものだった。

 

ブルーロックは、上記の3つの欠点を全て解消している。

 

ストライカー志望の有望な高校生サッカー部員を300人集めて施設に閉じ込め、1人のスターストライカーが生まれるまでバトルロワイヤルさせる。

あまりにもブッ飛んだ設定で、漫画的で非現実的だし、最初はこれウケんのか?面白いのか?と非常に疑問だった。

ところが、読み始めたら、この設定が、ヒット漫画を生み出す上で最高に最適な設定だとわかるんである。

 

サッカー漫画、3つの欠点を全て解消した漫画

まずバトルロワイヤル形式、個人vs個人の戦いだから、始まりは主人公1人に注目していればいい。

いざ試合が始まっても、3vs3や5vs5の変則的な試合ばかりだから、覚えるキャラクターも少なくて済む。

普通サッカー漫画で3vs3や5vs5の試合って練習シーンだから緊張感が生まれないんだけど、この漫画は負けたら即脱落の人生を賭けたバトルロワイヤルなので、全ての試合を緊張感を持って読むことができる。

 

次に登場人物が全員「ストライカー志望」であること。

全員ストライカーなので、多少の戦術はあれど、読者側としては「とにかくシュートを決めること」だけに着目して読めばいい。

複雑なチーム連携プレイを理解する必要はなく、主人公やメインキャラクターが「いかにしてボールをゴールネットに叩き込むか」だけに集中していればいいため、サッカーの戦術に疎い素人でもスムーズに読んでいくことができる。

 

最後に、得点シーンが多いこと。

バトルロワイヤル形式の変則的な試合で、さらに登場人物全員がストライカーのため、とにかくゴールがバンバン決まる。

ルールも5点先取とかの試合が多いため、90分の試合を読んで1点しか入らないかも、という心配が無用。だって5点取らないと試合が終わらないんだから。

 

後半は流石に11vs11の普通の試合にシフトしていくけど、ここまで読んできた読者は「この漫画の読み方」をわかっているから、普通の試合が始まってもすんなりと読むことができる。

キャラクターについてもゲーム展開についても、サッカー素人でも「どこに着目して、どこを追いながら読めばいいか」が最初の十数巻で自然と身についているから、いざ「普通の試合」が始まっても楽しんで読める。

 

総じて、この「ストライカーのバトルロワイヤル」というブッ飛んだ設定一つで、サッカー好き以外がサッカー漫画を楽しめない理由を全て潰しているのである。

実際、自分はこんなにサッカー漫画を面白いと思って読めたのは生まれて初めてだ。

これは企画勝ち、設定勝ち、アイディア勝ちだ。

ヒット漫画はたまたま生まれるものでなく、計算して生み出されている。そのことを久々に痛感した。

 

熱いゴールシーンの迫力ある描写力

もちろん、この漫画は設定だけでここまでヒットしたワケじゃなく、その設定があった上で、熱いゴールシーンとそこに至るまでの過程を、ド迫力で描き切る画力と表現力があってこそ、ここまで面白くなっている。

 

各キャラクターが試合の中で成長し、新しい自分に覚醒して、敵プレイヤーをかわして、ボールをゴールネットに叩き込むシーンは、すべからく熱くて迫力満点で手に汗握る展開に描かれている。

特に主人公やメインキャラクターがクライマックスで決めるゴールは全部熱い。読んでいて良い鳥肌がブワッと立つ。

 

設定だけでなく、絵や表現の熱・迫力・説得力においても、ヒットして然るべき面白さがちゃんとある漫画だ。

 

キレイゴトなんかいらない、全員エゴイストだから面白い

この漫画のテーマは一貫して「ストライカーはエゴイストであるべき」である。

だから、試合の中で綺麗事な展開は一切起こらないし、起こりそうになったら次のページには即その展開が否定されている。

心温まる絆やチームワークの描写は一切ないし、徹底して「俺がゴールを決めるんだ!俺が、俺のみが主役で、他の奴らは全員俺様のための脇役だ!!」という思想の奴だけが肯定される世界観になっている。

それが、最高にめちゃくちゃ気持ちいい。

 

友情は描かれるけど、それは「みんながいるから、俺は俺のサッカーができる!」といったハートフルな友情ではなく、「遠慮なく殺し合おうぜ」というバチバチのライバル関係の友情。

チームワークは描かれるけれど、「ワンフォーオール」なんてクソくらえ、あくまで最終的に個人がゴールを奪うための踏み台としてのチームワークだ。そしてそれをお互いが理解し合った上で、勝利のために協力し合うチームワークのみが描かれる。

 

我儘で自分勝手なプレイヤーが、チームワークに目覚めてパスを出すようになっていく、なんて温い展開はこの漫画にはない。

逆に、今までチームのために遠慮していたプレイヤーたちが、どんどん我儘と自分勝手に目覚めていく。

読んでて最高にスカッとする。

 

それと、ブルーロックでは「再現性」が重視されていて、再現性のないものは評価されないから、「奇跡」が起こらないのもいい。

根性・絆・想いの力で奇跡のゴールが決まる、そんな温い展開もない。

あっても全く評価されない。

奇跡は起こらず、論理的で根拠のあるゴールしか決まらないし認められない、そんな世界観も魅力の一つだ。

 

昔『ワンナウツ』で描かれたLチケットのエピソード。

『攻殻機動隊』の有名な台詞「我々の間にチームプレイなどという都合のよい言い訳は存在せん。 あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ」。

この2つと同じ信念で描かれた漫画、それを体現した漫画、それがブルーロックだ。

この2つに共感できる人は、この漫画を読んでも楽しめると思う。

 

エゴイスト同士のぶつかり合いが最高にスカッとする、サッカー好き以外でも読める、いやむしろサッカー興味ない人こそ読むべきである、熱くてド迫力の漫画。

それが『ブルーロック』。

面白そうだと思った方は、ぜひ読んでみてください。