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【映画】THE FIRST SLAM DUNK【感想】

THE FIRST SLAM DUNK

 

 

試合はただひたすらに最高だった

試合パートは、とにかくただひたすらに最高だった。

 

自分は生涯に2つ、絶対に叶わないであろう夢を持っていた。

一つは、スラムダンクの山王戦が、現代のアニメ技術、現代のアニメのテンポで、フルでアニメ映画化されること。

もう一つは、スラムダンクの山王戦を、実際のバスケの試合として、現実の時間感覚で生で観戦すること。

「この二つが見れたら、自分は死んでもいい」と常々公言していた。

 

実際に死んでもいいとは露ほども思っていないが、それでもこんな縁起でもないことを軽々しく口にできたのは、それほどこの二つが実現可能性が低いと思っていたからだ。生涯で見ることは絶対にないと思っていた。

 

今回の映画は、それほどまでに叶わぬ夢だと思っていたこの2つの願望を、ほぼほぼ叶えてくれた。

 

まさか単行本で7巻もある山王戦を、前半をほぼ丸ごとカットしたとはいえ、後半をほとんどフルで映画化してくれるとは夢にも思わなかったし、しかもそれを、極限まで実際の試合を見ている感覚にこだわって創作してくれるとは、さらに思わなかった。

 

旧アニメに感じていた不満点を全部払拭してくれた

かなり美化されているが、旧作のアニメ化は、自分は正直「クソアニメ」だと思っていた。良かったのは声優と主題歌だけで、試合自体はテンポは死んでいるしギャグも滑っているし、原作の良さを全殺ししていると言っても過言ではない出来だった。

そう思っていたのが自分だけじゃないのは、あれほどヒットした漫画のアニメ化にもかかわらず、全国大会前という中途半端なタイミングで打ち切りになったことからも明らかだろう。

延々と喋りながらドリブルしててどんだけコート広いんだよwww、1秒の間にどんだけ喋んだよwww、というのは、当時からよくツッコまれていた、し、井上雄彦自身も『リアル』の中でツッコんでいた。

そんな当時のアニメに視聴者も井上雄彦自身も感じていたであろう不満を、今回の映画は全部解消していた。

試合のテンポはめちゃくちゃ良くなっていたし、漫画では大爆笑だけど映像化すると再現が難しいギャグシーンは思い切ってバッサリカットされていたし、試合中の会話も無理のあるものは全部削られてどうしても入れざるを得ないものは口を動かさずに登場人物の心の声として処理されていたし。

 

実際の試合を観戦しているような感覚にしてくれた

もう一つ素晴らしかったのは、とにかく現実の試合に近づけようという作りにしてくれたこと。

見終わったときの視聴後感は完全に「アニメ」ではなく「本物のバスケの試合」を見た感覚だった。

ドラマパートを抜かした試合パートを見ていた時間は、体感で実際の後半の試合時間である "20分間" に限りなく近いんじゃないだろうか。

 

山王戦の後半戦、単行本にして約5巻分もある内容だが、それがフルで映画化されている。

本来のペースでアニメ化したら15~20話、6〜8時間はかかる内容だ。

当然、台詞やモノローグは、かなり大切なものも含めて、多くがカットされてしまっている。

それでも、試合の中のプレー自体は、カットされているものは一つもないんじゃないだろうか。

あの伝説の20分間を、バスケの試合としては、完全再現しているのだ。

 

生きているうちにこれが見られるとは思っていなかった

とにかく最初のオープニングで敵チームが足から鉛筆画で描かれていき、「山王工業高校」の文字が現れたときの高揚感は半端じゃなかった。ネタバレ喰らわずに初日に見に行ってマジで良かった。

 

そして試合の最後の1分の無音パート。

本当に映画でも無音を再現してくれるとは思わなかったし、迫力もあそこでより一層凄くなって、文句のつけようがない完璧な映像化だった。

「左手はそえるだけ」をあえて言わないところも、堂本監督が取りかけたタイムアウトを止めるシーンのモノローグを全部カットして動きだけで表現したところも、全てが完璧だった。

100万回読んだシーンで、展開も全て知ってるのに、固唾を飲んで見守ってしまったし、最後のシュートは思わず心の中で「入れッ…!」と呟いてしまった。

 

桜木と流川のロータッチを、死ぬ前に映画館で見れるなんて。

 

本当に、生きてて良かった。

 

「老害」と言われようと、それでも原作通りにしてほしかったと思ってしまう

ただ、それだけに、「なんで宮城が主人公なんだよ…!」「なんでオリジナルのドラマパートがこんなにあるんだよ…!」「なんで原作のあの台詞をあの場面をカットしちゃったんだよ…!」と思わずにはいられなかった。

 

井上雄彦がクリエイターとして、ただ原作をなぞっただけのものを創りたくないのもわかる。

こんだけ素晴らしいものを作ってもらって、文句を言うなんて贅沢すぎるっていうのもわかる。

 

でも…!

それでも…!

やっぱり、「大好きです、今度は嘘じゃないっす」が見たかったし、「聞こえんのか?」が見たかったし、「まだ何かを成し遂げたわけじゃない。なぜこんなことを思い出している バカめ」が見たかった…!

 

半分手に入ったからこそ、完全なものを望んでしまう

山王戦を試合開始から試合終了まで描いてもまだあんなにドラマパートを入れる余裕があるのなら、その尺を試合中の描写に使えば、上の名場面も全部再現できたんじゃん!?

ずっと試合描写だけだと単調になるっていうのなら、せめて原作の1巻から山王戦前までのエピソードを回想する形でドラマパートとして入れればよかったんちゃうん!?

宮城主人公にしちゃったら、最後に桜木がシュートを決めるシーンや、最後の桜木と流川のロータッチの重みが薄れちゃうし、物語として軸がブレブレになってしまうやん!?

 

そんなことが頭の中をずっと駆け巡り、心から楽しめなかったのは事実だった。

 

や、これがグダグダの映画だったり、そもそも山王戦ですらないオリジナルだったら、ここまで文句は言わなかったのよ。

あー、やっぱりこんなもんね。そもそも山王戦のアニメ化なんて無理だったのよ。とあっさり諦めてた。

なまじ、描写された試合部分は完璧だったからこそ、やろうと思えば技術的にも尺的にも2時間半で原作の完璧な完全再現は可能だということを知ってしまったからこそ、それが見たかったなぁぁぁぁぁあああああああと思わずにはいられないのだ。

 

それが「老害」であり「原作厨」であり「懐古厨」である醜い所業、醜い気持ちだとしても、想ってしまうことを止めることはできない。

 

だって死ぬほど見たかったものなんだもの。

それが手に入る可能性もあったことを考えると、それが見たかったと思ってしまうじゃん。

 

宮城の過去描写は正直、つまらなかった

こう思ってしまう理由の一つに、宮城の過去回想であるドラマパートが、シンプルに自分にとって「面白くなかった」のもあると思う。

スラムダンクであるという以前に、あのパートが一つの独立したストーリーとして、自分にはハマらなかった。

正直、ドラマパートの間はずっと「早く試合に戻らねぇかな」と思ってしまっていた。

 

この映画の評価は、シンプルにあのドラマパートの内容がハマるかハマらないかで分かれると思う。

ああいうドラマが好みな人、あの内容に感情移入できる人にとっては、原作を知ってる知らないにかかわらず満足感が高くなるし、

自分みたいに好みじゃない人、感情移入できない人には満足感を下げる要因になってしまう。

 

正直、自分にとってあの宮城のドラマパートは「いらないもの」だった。

 

 

純粋な気持ちで、もう一度見に行きたい

とはいえ、こういうツイートを見たりすると、自分は汚れた気持ちで見過ぎだったのかなぁとは思う。

 

ドラマパートを「あまり面白くない」と感じてしまったのは素直な気持ちだし、それに嘘をつく必要はないけれど、

試合パートは「これに文句つけるとかおこがましいにも程がある」ってレベルで最高だったのはまぎれもない真実なワケで、

汚い気持ちを全部取り払った上で、もう一度まっさらな心でこの映画を見たい。

 

だから見に行きます、もう一度。

せっかくこんな素晴らしいものを創ってもらったんだもの。

生涯、叶うことのないと思っていた夢を叶えてもらったんだもの。

心から楽しまないと、損だ。

 

てなわけで、また劇場に足を運ぼうと思います。

今度は、純粋に楽しむぞ!