19歳のとき、1年浪人して無事大学に合格した春休み、
高校の友人と3人でドラえもんの映画を見に行った。
友人の1人が熱狂的なドラえもんオタクで、以前2人で『翼の勇者たち』を見に行って面白かったから、今度はお前も一緒に3人で行こうぜ、という話である。
ドラオタの彼はともかく、俺たち2人は完全にネタのつもりだった。大の高校生が子供の群れに交じって男3人でドラえもんの映画見てるってなんかウケね(笑)? っていうノリだった。
ところが、上映終了後……
男3人、映画館の座席で
ドワァーーッ!! っと
ボロ泣きしていた。
映画が終わって、「ママ―おなかすいたー」とか言いながら走り回っている子供たちの中で、滝のように涙を流しながら座席から立てずにいる大人の男3人。
まったくシュールな光景だ。
その時見た映画こそが
正直このタイトルでボロ泣きするとは思わねーじゃん!?
ワンニャンって!
でも泣いた。泣けた。素晴らしかった。
中盤、ある人物が記憶を取り戻し、のび太と再会するシーンがとにかく泣けるんである。それまでの伏線が利いていて、涙腺にハードパンチぶちかましてくる。
この映画に限らず、ドラえもんの劇場版は伏線の張り方と回収の仕方が素晴らしい。
というか、話の作りが全体的に上手い。
流石元祖タイムパラドックスものだけあって、時空改変絡みのストーリーの仕掛け方はホント毎回舌を巻く。大人でも驚愕する…というより明らかに大人向けだろってレベルのストーリー構成。
『竜の騎士』『鉄人兵団』あたりは特にすごい。
他にドラえもんの映画で特に好きなのが、
『雲の王国』だ。
ドラえもんの映画は大抵の作品で、冒頭、のび太たちが秘密道具を駆使して、自分たちだけの楽園を作り上げる*1んだけど、その楽園が『雲の王国』は特に素晴らしい!
なんてったって雲の上である。雲の上に、自分の好きな家や、好きなお店や、好きなリゾートや、好きな遊戯施設を作りまくるのだ。他にも滝を作ったり、緑地や公園やお城を好きなように配置したり。夢溢れすぎでしょ。最高。俺もやりたい。俺も仕事辞めてあすこに住みたい。
そしてストーリーも良くできてる。なんつっても絶望感が他の作品と段違い。ドラえもんの映画においてドラえもんが壊れるというのが一番絶望感を感じる瞬間だが、この映画ではそれが起こるのだ。
あと、タイムゲートで未来の危機をのび太が見てしまうシーンがあるのだが、それが、数日後に自分たちが住んでいる東京を含めた世界中が全て洪水で押し流される、というもの。これは子供心にめっちゃ怖かった。他の映画みたいに、ロボットが攻めてくるとか宇宙人が攻めてくるとかならリアリティがないからそこまで怖くはないんだけど、洪水という現実に起こりうる出来事だからこそすごい怖さがあった。
通常のテレビ放映で登場したキャラクターを再登場させるのもこの映画独特だ。他の作品では通常のテレビ放送とのリンクはないからね。
そしてなんといっても
ラストが泣ける!
ネタバレになるから伏せるが、ドラえもんが……なのは、長い劇場版の歴史の中でも、この作品だけだろう。
とにかく、色んな意味で特別なのがこの『雲の王国』。
オススメである。
あと、ファンの間で人気が高いのは『鉄人兵団』だよね。これも、切ない最後がすごい泣けるっていう。
ところが、俺はこの鉄人兵団の映画を見たことがないのだ。というか、鉄人兵団をはじめ大長編の多くの作品を映画で見てはいない。でも話は全てよく知ってる。なぜか。
実は、おばあちゃんちに原作の漫画が揃っていて、それで全部読んでしまったのだ。『恐竜』から『銀河超特急』まで一通り揃ってた。おばあちゃんちなんて他にやることないから、何度も読んじゃうよね。内容も全部覚えちゃった。*2
いやー、でもあれは映画で見るべきだね。2時間の映像演出付きではじめて最高に面白くなるような話の作りになってるもん。先に漫画で読んで筋だけ知っちゃってるのは残念すぎる。うーん、勿体ないことをした。
だから、機会があれば『鉄人兵団』や『海底鬼岩城』や、まだ映像では見たことのない劇場版ドラえもん作品を全部一気見したい。絶対、今見ても楽しいはずだから。
ドラえもんの映画は大人が見ても面白いよ。大人が見ても感心する話の作り、大人が見ても感動して泣く名場面、そういう要素がしっかり入ってるから。
貴方の好きな、劇場版ドラえもん作品は何ですか?