リーガル・ハイ
好きな漫画1位も、
好きなゲーム1位も、
好きな映画1位も、
全て小学生のときに出会ったやつである。
それほど、思い出補正というのは強い。
ところが、好きなドラマ1位は、東京に来てから、
もう27歳になってから出会ったやつである。
それは、思い出補正が全くかからず、
純粋に中身の面白さだけで大好きだってことを意味する。
中高時代に夢中になった、HEROより、GTOより、ショムニより大好きなドラマ。
それが、『リーガル・ハイ』。
いわゆる「法廷ドラマ」である。
裁判所の裁判官の前で、
弁護士 vs 弁護士、
もしくは 弁護士 vs 検事 で、
舌戦を繰り広げるアレである。
あぁ、はいはい、昔からイヤというほど使い古された、
手垢のついたあのジャンルね。
ところが、『リーガル・ハイ』は、一点だけ大きく違うところがある。
例えば、1期の第4話は、マンションの日照権の話である。
巨大なマンションを建設中の悪徳大手ゼネコンと、
それによって日照権を奪われようとしている、可哀相な住宅街の住民たちとの対決。
ここまではよくある話だ。
ところが、主人公が味方に付くのは、住宅街の住民ではない。
「大手ゼネコン」の方なのだ。
そう、主人公は、悪徳弁護士なのだ。
性格がひん曲がっていて、子供で、金に目がない。
エキセントリックで毒舌で自己中心的で人格破綻者。
だけど、強い!
この横柄な悪徳弁護士が、その無類の強さで勝利を積み上げていく様子を、
あの半沢直樹を演じた 堺 雅人 が、コメディタッチで痛快に演じていく。
そして、正義というのは決して一つの側面では測れない、
ということを俺たちは知る。
この価値観の転換が『リーガル・ハイ』の一つの大きな魅力だ。
一見正しいように見えても、コインの裏側から見ると、全く別の模様が描かれていたりする。
普段俺たちが見ている世界が、いかに一方的なものの見方をしているかを教えてくれる。
そして、堺 雅人 の台詞量が半端じゃない!
以下は、俺が最も好きな1期の第9話のクライマックスシーンなのだが、
※分量を見てほしいだけでややネタバレ有りなので読み飛ばし推奨
「素晴らしい!皆さんのお考えに感服いたしました。さすがふれあいと絆の里だ。それではそのように手続きしましょう。黛君あとは頼んだ。さようなら。(黛)いいんだよ。彼らが良いと言ってるんだから。ですよね皆さん。(村人)見たまえ彼らの満足そうなこの表情を。ズワイガニ食べ放題ツアーの帰りのバスの中そのものじゃないか。黛君よく覚えておきたまえ、これがこの国の馴れ合いという文化の根深さだ。人間は長い年月飼い馴らされるとかくもダニのような生き物になるのだよ。(村人)他に誰かいますか?自覚すらないとは本当にうらやましい。コケにされているのも気づかないまま墓に入れるなんて幸せな人生だ。(村人)申し訳ありません最初に申し上げたとおり皆さんのような惨めな老人共が大っ嫌いなもんでして。(村人)倍も生きていらっしゃるのにご自分のこともわかっていらっしゃらないようなので教えて差し上げているんです。いいですか。皆さんは国に見捨てられた民、棄民なんです。国の発展の為には年金を貪るだけの老人なんて無価値ですから、ちりとりで集めてはじっこに寄せて、羊羹を食わせて黙らせているんです。大企業に寄生する心優しいダニそれが皆さんだ。(村人)かつてこの地は、一面に桑畑が広がっていたそうです。どの家でも蚕を飼っていたからだ。それはそれは美しい絹を紡いだそうです。それを讃えて人々は、いつしかこの地を絹美と呼ぶようになりました。養蚕業が衰退してからは稲作に転じました。日本酒に適した素晴らしい米を作ったそうですが、政府の農地改革によってそれも衰退した。その後はこれといった産業もなく、過疎化の一途を辿りました。市町村合併を繰り返し、補助金でしのぎました。五年前に化学工場がやってきましたねえ。反対運動をしてみたらお小遣いが貰えた。多くは農業すら放棄した。ふれあいセンターなどという中身の無い立派な箱物も建ててもらえた。使いもしない光ファイバーも引いてもらえた。ありがたいですねー。絹美という古臭い名前を捨てたら南モンブラン市というファッショナブルな名前になりました。なんてナウでヤングでトレンディなんでしょう。そして今、土を汚され、水を汚され、病に冒され、この土地にももはや住めない可能性だってあるけれど、でも商品券もくれたし、誠意も絆も感じられた。ありがたいことです。本当によかったよかった。これで土地も水も甦るんでしょう。病気も治るんでしょう。工場は汚染物質を垂れ流し続けるけれど、きっともう問題は起こらないんでしょう。だって絆があるからぁ!(村人)なぜ?ゴミクズ扱いされているのをわかっているのに、なぜ納得しようとしてるんです!(村人)年寄りだからなんなんですか?(村人)だから何だってんだー!だからいたわってほしいんですか。だから慰めてほしいんですか。だから優しくされたらすぐに嬉しくなってしまうんですか。先人たちに申し訳ないと、子々孫々に恥ずかしいと思わないですか。何が南モンブランだ。絹美村は本物のモンブランより遥かに美しいとどうして思わないんですか!誰にも責任を取らせず、見たくないものを見ず、みんな仲良しで暮らしていければ楽でしょう。しかし、もし、誇りある生き方を取り戻したいのなら、見たくない現実を見なければならない。深い傷を負う覚悟で前に進まなければならない。戦うということはそういうことだ。愚痴なら墓場で言えばいい。金が全てではない?金なんですよ。あなた方が相手に一矢報い、意気地を見せ付ける方法は、奪われたものと、踏みにじられた尊厳にふさわしい対価を勝ち取ることだけなんだ。それ以外にないんだ。ニシキノハルオさん、あなたは元郵便局長だ。幾度となく閉鎖されそうになった村の郵便局を最後まで守り抜いた。モリグチサブロウさんは小学校の校長先生。村にいた子供たちはみんなあなたの教え子だ。奥さんのヒサコさんは町のデパートの化粧品売り場で月間売り上げの記録の保持者。ゴウダジョウジさんは実に100haもの田畑を開墾した。カワタサトコさんとご主人は田んぼをやりながら日雇いの仕事をいくつもいくつも掛け持った。トミタヤスヒロさんは商店街の会長。毎年祭りを盛り上げて、あのクリスタルキングを呼んだこともある。イタクラハツネさんは女だてらにクレーン車を動かし、六人の子供を育て上げた。敗戦のどん底から、この国の最繁栄期を築き上げたあなた方なら、その魂をきっとどこかに残してる!…はずだと期待した私が愚かでした。いいですか。二度と老後の暇つぶしに私を巻き込まないでいただきたい。心優しいダニ同士お互い傷を舐めあいながら穏やかに健やかにどうぞくたばっていってください。それではみなさん、さようなら!」
この分量である。
これを、ちょくちょく相手のリアクションが入るにせよ、
ほぼほぼ一気に一人で喋り切る。
その所要時間約6分。
まさに圧巻の一言である。*1
ドラマ史上最長とも思える長台詞を息もつかせず一人で喋り切り、
その間全く視聴者を飽きさせない、堺雅人のその演技。
それを堪能するだけでも、このドラマを見る価値はある。
ひたすら笑って、
どんでん返しに「うおぉ!」と驚き、
そして最後にはハッと大事なことに気付かされる。
そんなドラマ『リーガル・ハイ』。
オススメです。
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*1:ちなみにこのシーン、大好きすぎてほぼほぼ暗唱できるようになった