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【好きなものを好きなように語る】映画『シン・ゴジラ』の魅力 〜ここ10年で最高の映画〜

シン・ゴジラ

 

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ものすごく大好きな映画。

 

人生で見た映画の中でもベスト10には入る。

 

しかもベスト10のうち他の映画は全て高校時代以前に初めて見た映画で、強力な思い出補正がかかっている。ここ10年で見た映画でマイベストに入っている映画はこの映画だけだ。客観的評価だけで言ったら、人生でも相当トップクラスの映画なんじゃないだろうか。

 

まだ見てない人は今すぐに見た方がいい。

 

 

ひたすらに現実的な映画

この映画の最大の特徴はこれ。

とにかく現実的

 

怪獣映画というファンタジーの象徴のようなジャンルの映画なのに、

『現実 対 虚構』というキャッチコピーが示す通り、

ひたすらにどこまでも現実的。

この映画で虚構なのはゴジラだけで、ゴジラ以外は全て現実の日本をとにかく忠実に再現している。

 

現代の日本、正確にいうと公開当時の2016年の日本に、実際にゴジラが出現したらどうなるのかというのを、綿密にシュミレーションしてめちゃくちゃ現実的に描き切ったのが、この『シン・ゴジラ』という映画だ。

 

実際に、当時の防衛大臣である石破茂と、東日本大震災の対応が記憶に残る枝野幸男に取材をして作られた映画でもある。

 

今の日本に本当にゴジラが出たらどうなるのか、それを、善も悪もなく、主義も主張もなく、まっさらな視点で、ただひたすらに淡々と描いていく。

 

 

『怪獣』という言葉が生まれていない世界

『シン・ゴジラ』のもう一つの大きな特徴として、シン・ゴジラの世界は「円谷英二が生まれなかった世界」であるという点がある。

怪獣映画が存在せず、誰も『怪獣』という概念を知らない世界だ。

だから、劇中では「怪獣」という言葉は一度も使われていない。

 

序盤は一貫して「巨大不明生物」と呼ばれているし、政府によって公式に「ゴジラ」と名付けられた後も、登場人物の一部は執拗に「巨大不明生物」と呼び続ける者もいるくらいだ。

 

ゴジラ映画は第一作以外は全て登場人物がゴジラを知っている世界観で描かれている。だから、ゴジラが出現したときも、「ゴジラが出たぞー!」というリアクションで、その恐ろしさや被害の大きさ、何が起こるかをある程度想像できるという設定だ。

ところが、『シン・ゴジラ』の登場人物はゴジラどころか "怪獣" というものの存在すら全く知らないのである。だから、序盤、「海中に何か巨大な生物が出現したらしい」というニュースが入っても、そのことの重大さが全くわからない。政治家たちが呑気に的外れな議論をしているうちに徐々に被害が拡大していき、誰もがその恐ろしさに段々と気付いていく様子は、背筋が凍るほど恐ろしいものがある。

 

『シン・ゴジラ』は1954年公開のゴジラ第一作をリスペクトして作られている。あのとき、映画の中の登場人物も、そして、映画を見ている観客たちも、誰も怪獣を、ゴジラを知らなかった。その状態で味わうゴジラの恐ろしさを、凄まじく忠実に再現しにきている。

 

 

私たちに共通する『ある記憶』を呼び醒ます映画

この映画が虚構であるはずのゴジラをこれだけ現実的に描けるのには、もう一つ理由がある。

 

それは、2016年の日本に生きる者ならば誰もが持っている『ある記憶』を呼び醒ますからだ。

 

東日本大震災 である。

 

序盤、川の逆流と共に押し寄せる船と瓦礫、中盤、ゴジラが通った後に瓦礫だらけになった街並、そして終盤の避難所の様子。これを見て東日本大震災を想起しない人はいないだろう。

 

この『シン・ゴジラ』という映画、ゴジラをそのまま震災に置き換えても丸々成立するようになっている。我々は怪獣に日本を襲われた経験はないけれども、未知の巨大な力が海からやってきて、街を破壊して沢山の人を殺して、日常の全てを奪い去っていくという経験はしたことがある。それがあるから、ファンタジーのはずのこの映画をここまで現実的に捉えることができるんだ。

 

逆に言うと、この映画をここまで自分ごととして受け止められるのは我々だけだ。50年前の日本人も、きっと50年後の日本人も、この映画を見てもここまでピンとは来ない。当然、外国人にもあまりウケないだろう。実際に公開当時は日本では大ヒットしたけど、海外ではイマイチだったと聞いている。当然だ。これは、現代に生きる日本人だけに向けて作られた映画なのだから。

 

2016年に生きる全ての日本人、過去も未来も海外も全て捨てて、ただそれだけのために作られた映画、それが『シン・ゴジラ』。

 

だから、こんな素晴らしい映画の感動と興奮を享受できるのは我々だけなんだよね。

本当に、今見ないと勿体ないよ。

 

 

今の日本の良いところも悪いところも両方描かれている

『シン・ゴジラ』は "今の日本" をとにかく現実に忠実に描いた映画なワケだけど、

凄いのはその "今の日本" の良いところと悪いところを両方フラットに描いているということ。

 

この映画はホントに善とか悪とか主義とか主張とかが全くない。

この手の映画によくありがちな政府批判や環境問題批判や人間賛歌みたいなものが全くない。

ただただ、今の日本の政府や国民の、良いところ、悪いところ、弱いところ、強いところ、全部そのまま描いている。

 

序盤、のらりくらりと会議を重ね、仕事が役所間で盥回しにされ、認可や書類が通らないと動けないせいでゴジラへの対応が遅れてしまうところとかはすごいリアルだし、逆に終盤は実は日本の政府には日本の政府ならではのこんな強みがあるみたいなところを見せつけてくる。

作り手側は一切メッセージ性を込めてはいないけど、見ていると今の日本の課題が浮き彫りになると共に、何も悪いところばかりじゃなく、弱さは裏を返せばこんな強みになる、自分は実は底力のある国に生きてるんだなと思えて誇らしい気持ちになる。

 

 

超豪華すぎるキャストや提供

そして、これだけの『現実』を再現するために、めちゃくちゃ豪華なキャストと提供・協力を投じている。

『シン・ゴジラ』を見るときは、ぜひともエンドロールに注目して見てほしい。

その豪華さに目が点になるはずだ。

 

まずは主要キャストの数がなんと 328名。

これはエキストラを入れた数じゃない。有名な俳優・女優さんの数で328名だ。

たった一瞬映るだけのキャストに 前田 敦子斎藤 工 みたいな有名人が平気でものすごい数使われている。エンドロールを見たときに「え?この人どこに出てたの!?」と驚くこと請け合いだ。

 

勿論、主要登場人物のキャストもハマり役。

まだここまで人気が絶頂になる前の 高橋 一生市川 実日子 のキャラクターがすごい魅力的だし。

ベテラン勢である 國村 隼柄本 明 の渋い演技もめっっっちゃくちゃカッコいい!!!

亡くなった 大杉 漣 さん演じる総理大臣もダメなところとカッコいいところが両方あってとてもいい。

 

さらには協力機関・企業の数も凄い!!!!!

さっき石破茂や枝野幸男に実際に取材して作られているって書いたけれども、勿論それだけじゃなく、防衛庁や自衛隊に協力を依頼し、首相官邸までロケハンしている。

エンドロールに登場する機関や企業の数は圧倒的で、どれだけ制作陣が本気でこの映画を作ったのかがわかるから、エンドロールを見ただけで感動して泣きそうになる。

 

 

細かいところまで追求されるリアリティ

とにかく映画としての演出よりも『現実的か否か』が最重要視されているから、普通の映画では考えられない表現や演出が用いられていたりする。

 

個人的に印象的なのは、最後にゴジラを食い止めることに成功したとき、みんなが「ワーッ」で喜んで抱き合ったりするシーンが一切ないこと。

大勢が詰めかけている会議室は、ゴジラ凍結成功の知らせを受けたとき、シーンとした中で、数人が「フーッ」という安堵のため息をつきながら椅子にもたれかかる音が少し響くだけだ。

実際に大勢の死者が出た災害の対策を終えたときに、きっと映画のように紙吹雪を撒き散らして抱き合って喜ぶことなどできない。ただただ安堵のため息をつくだけだ。

そんなところまでひたすらに現実を描き切るこの映画が自分は大好きなんである。

 

あと、主要登場人物はほぼほぼ政治家や研究者だから、映画の中の台詞は全て超高速で専門用語を並べ立てて一気に捲し立てられる。これも、普通の映画ではあり得ないことだ。

見ている人が聞き取りやすくわかりやすくなんて知ったことか。映画の演技じゃない、とにかく「本物の政治家や研究者の会議らしさ」を再現した劇中の会議シーンはめちゃくちゃ見応えがある。

 

会議シーンなんて普通の映画ではつまらないものだけど、この映画を見終わった後は「やべぇ会議シーンちょうおもしろいもっとみたい」ってなる。絶対。

 

あと、ゴジラが近くを通ってるのにスマホで撮影してる人々とか、災害があっても翌日に何事もなく日常が再開するところとか、人の死を直接的には描かないのに痛ましく表現しているところとか、ありとあらゆるところにリアリティが溢れていて、ホントたまらん。

 

 

何が面白いのか 

さて、ここまで『シン・ゴジラ』がひたすら "現実的である" ってことだけを語ってきたけど、"面白さ"については語ってこなかった。

 

この究極の現実映画は、そもそも何が面白いのか?

 

エンターテイメント作品なんて、極論を言ってしまえば「どれだけ感情移入できるか」がそのまま面白さに直結すると言っても過言ではない。

 

プロットもキャラクターも演出も、結局は感情移入を促進させ、没入感を高めるためにあるものだ。

 

劇中の恐怖や緊張や興奮や悲しみや喜びや楽しさを極限まで自分ごととして捉えられたとき、そのエンターテイメントの面白さは最大化する。

 

そして、その一点をここまで極めた映画は他にない。

 

ゴジラが はじめて火を噴く瞬間の絶望感 や、最後のヤシオリ作戦に対する「いけええええええ!」っていう応援と興奮の感情は、めちゃくちゃ凄まじい面白さだし、何より、他の映画では絶対に味わえない!

 

映画という既存のジャンルでありながら、その感覚やその面白さは、未知の、全く新しいものだ。

これはもはや映画という枠を大きく飛び越えた新感覚エンターテイメントである。

 

その性質上、絶対に映画館で見た方が面白いから、家で小さな画面で見たときにここまでドハマリできるかはわからないけど、少なくとも一回は絶対に見た方がいいよ。

今ならアマゾンプライムで見られるし。

どうせみんなアマゾンプライム入ってるんでしょ?

だったらタダじゃんタダ。

こんな素晴らしいエンターテイメントがタダなんてありえないよ!

 

見て合わなくても2時間無駄にするだけだけど、

合うのに見なかったとしたら一生損することになる。

ためしに見とくにこしたことはない。

 

 

1回見て面白かったら、2回目を見よう

その性質上、細かいギミックにめちゃくちゃ凝ってる映画なので、何回見ても見るたびに新しい発見があるんだよね。だから、1回見て面白かったら、2回目、3回目と繰り返し見ることをオススメします。

可能であればTwitterの「#細かすぎて伝わらないシン・ゴジラの好きなところ選手権」っていうタグを漁ってから2回目みるといいよ。ハマる。今も見られるかどうかはわからないけど。

 

 

映画という枠を超えた21世紀最高の新エンターテイメント『シン・ゴジラ』。

 

一度は見ることをオススメします。

 

 

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2017/03/22
  • メディア: Blu-ray