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【アニメ】おそ松さん 〜第1期最初の3話は、メガヒットのために計算ずくで作られた、とんでもなく素晴らしい3話だった!!〜

おそ松さん

 

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4年前に大ヒットし、社会現象を巻き起こした超有名ギャグアニメ。

 

自分も御多分に漏れず、このアニメが大好きなんだが、今あらためて振り返っても、最初の3話がすさまじく素晴らしかったなぁと、時々思い返すので、今日はその話をしていこうと思う。

 

 

最初の3話の何が素晴らしいの?

『おそ松さん』の最初の3話の何が素晴らしいのか。

それは、この3話がそれぞれ、 全く異なるターゲット層を、ピンポイントで狙い撃ちにするために作られている。という点だ。

『おそ松さん』の視聴者として想定される3つの別々の客層に対して、「このアニメはあなた向けのアニメですよ」というメッセージをめちゃくちゃ上手に魅力的に届けている。

 

加えて、視聴者の心の動きを全て想定して先読みするように動いていたり、

「六つ子」という、本来ならなかなか区別がつかないはずの、6人のメインキャラクターが、たった3話見ただけで見分けがつくようになっていたり、

あらゆるところが計算ずくで作られている。

メガヒットを生み出すための仕掛けだらけの、素晴らしい3話構成だ。

 

実際にどういう仕掛けがあり、どこをターゲットにしていたのか?

1話ずつ見ていこう。

 

 

第1話 ふっかつ!おそ松くん

「おそ松くん」リメイクと聞いて

最初に、「おそ松くん」がリメイクされるというネットニュースが飛び込んできたときの、世間の反応はこれである。

「え、そんな昭和のアニメのリメイクなんて誰が見るの?」

誰だってそう思う。

俺もそう思った。

 

そもそも「おそ松くん」のアニメが大ヒットし、「シェー!」というギャグが社会現象になったのは1966年なんである。その頃小学生だった視聴者層は今や60代。誰も深夜アニメなんて見ない。

アニメ第2期ですら1988年だ。今の30代が、「なんか幼稚園の頃、六つ子が主役とかいっておきながら実質イヤミとチビ太が主役のアニメがやってた気がする」ぐらいのおぼろげな記憶を持っているかいないかぐらいである。

 

そんなアニメがリメイクされると聞いて、全ての人が抱いた疑問は当然、

「誰が見るの?」=「誰をターゲットにしてんの??」

である。

 

そして、はじまった『おそ松さん』第1話は、この疑問に最高の形で答えた んである。

 

 

衝撃のはじまり

『おそ松さん』第1話は、レトロな 4:3の白黒の画面 からはじまる。

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そして、昭和時代の絵のままのおそ松くんたちがこう口にするのである。

「ぼくたち昭和のアニメだよ?今さら人気、出るのかなぁ…?」

視聴者の全員が抱いている疑問を、いきなり画面の中のキャラクターに言わせるんである。

 

それを聞いた僕らはこう思う。

「うん、それ、俺も思ってた」

 

 

で、おそ松くんが「大丈夫、いい作戦があるんだ!」と言い放った、

 

その次の瞬間…

 

 

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いきなり16:9のカラー画面 になり、

イケメンのライブコンサートがはじまるんである。

 

この、視聴者の疑念と不安を逆手に取った演出 は本っっっ当に面白かった!!!

自分は画面が4:3から16:9に切り替わったその一瞬で 大爆笑 し、「あ、これ第2話以降も見よう」と 即決で視聴継続を決定 したんである。

 

 

伝説の第1話

で、すごかったのはこっから。

あろうことか「うたのプリンス様」「花より男子」「ラブライブ」「ハイキュー」「黒子のバスケ」「弱虫ペダル」「進撃の巨人」… と、数え切れないほど多くの他の流行りのアニメ作品をパクリまくりパロディしまくり、これ絶対多方面から怒られまくるやろ という伝説の第1話を作り上げたのである。

今はこの第1話は DVDでもBDでもあらゆる配信サービスでも収録されていなくて一切見ることができない と言えば、どれだけ酷かったか が、少しは伝わるだろうか。

 

当然、ネットではめちゃくちゃ話題になり、良いか悪いかはともかくスタートダッシュにはこれ以上ないほどに大成功した。

その代償として第1話は丸ごとこの世から消されてしまったが、まさに記録には残らず記憶には永遠に残すという、伝説の所業 である。

 

 

第1話のターゲット層

で、そんな伝説の第1話が、一体誰をターゲット層にしていたのか。

これはもう最初っからおそ松さん制作陣が、もっとも数が多く、もっとも経済面で大きな支え=収入源になると想定していたであろう一番のメインターゲット

腐女子女性オタク である。

 

これでもかというほど 乙女ゲーBL のテイストをわかりやすく全面に押し出しているし、パロディ元も「うたのプリンス様」「花より男子」「ラブライブ」「ハイキュー」「黒子のバスケ」「弱虫ペダル」「進撃の巨人」と、女性人気の高いものばかり。

 

さらに言うと第1話のノリは、腐女子に神懸かり的に人気があるあの『銀魂』のノリそのままである。

もちろん、監督が銀魂と同じだから似てくるっていうのもある。だけどこれは明らかに「似てしまった」のではなく「似せてきた」ものだ。

銀魂のファン層に、このアニメはあなたのものですよ というメッセージを届けるために。

 

 

第2話 「就職しよう」「おそ松の憂鬱」

今風のイケメンアニメから、一転して原作風のおそ松くん風に戻った第2話。

この第2話はもう仕掛けだらけである。

 

冒頭から始まる視聴者へのメッセージ

アバンでいきなりはじまる、市ヶ谷の釣り堀でのシュールなショートコント。

このコントで重要な点は、チョロ松 がボケである という点である。

 

第1話を見た人には「6人の中でチョロ松だけが常識人でマトモでツッコミ役」という強烈な印象が付いている。

それに対して「アレは第1話をわかりやすくするために便宜上仕方なくやったことで、本来はチョロ松も含め 6人全員がイカれてますよ」というメッセージを冒頭でいきなり突きつける。

 

あのアバンのコントは、「このアニメは5人のボケと1人のツッコミの話ではなく、全員がイカれた6人の変人の話ですよ」ということを視聴者に伝える、たったそれだけの、しかし非常に重要な役割を負ったパートなのである。

 

 

6人の個性をわかりやすく伝える

この第2話で最も重要なことはこれ。

「6人の個性をわかりやすく視聴者に伝えること」

この第2話はたったそれだけのために作られた1話だと言っても過言ではない。

 

まず、冒頭のハローワークの面談のシーンが凄い。

この6人がそれぞれどういうキャラクターなのかを たった1分15秒で完全に表現し切っている この面談シーンは凄いの一言。

初めて見る人でも、この1分15秒を見れば、以下のように誰がどういうキャラクターなのかだいたい掴めるようになっている。

おそ松 → クズなダメンズ

カラ松 → 中二病だが根は小心者

チョロ松 → 意識高い系

一松 → 根暗でネガティブ

十四松 → テンション高いシュールキャラ

トド松 → 女たらし

 

さらに後半の「おそ松の憂鬱」のエピソードでは、私服姿でプライベートに勤しむ6人の様子がたっぷり描写される。

ここまで見れば、今後この6人をどういう視点で見ればいいのかに、全く不自由しない作りになっている。

 

 

第2話のターゲット層

第2話のターゲット層は、「シュールギャグ好き」「ゆる日常系好き」

ある種、原作の「おそ松くん」好きに一番近い層じゃないだろうか。

明らかに女性向け、かつテンションの高いツッコミが応酬する危険なパロディ祭りだった第1話から一転して、原作のようなシュールギャグ好きも、軽い気持ちでゆるゆる見たいゆる日常系好きも、安心して見れますよーと言わんばかりの第2話になっている。

 

やっぱりそもそもの「おそ松くんファン」に届けたいって思いはあるだろうし、深夜アニメ好きには「ゆる〜い日常モノを何も考えずボーッと見ていたい」という層が一定数いるので、そこをしっかりと取り込むのは思いの外大事なんではないかと思う。

 

 

第3話 こぼれ話集

まだ3話なのになんで「こぼれ話集」?

第2話の予告を見て、カラ松の

「次回は、こぼれ話集でよろしくぅ」

という台詞を聞いて、視聴者はこう思う。

「え?まだ2話しかやってない…というか実質1話しかやってないのに、こぼれ話?早くない?この段階で、どこに何がこぼれてんの??」

 

しかし、これにもちゃんとした理由があるんである。

 

 

第3話のターゲット層

さて、制作陣が最後に狙いを定めたターゲット層、

第3話で想定していたターゲット層だが、

これはめちゃくちゃわかりやすい。

 

ズバリ、小学5年生男子 である。*1

 

なんせ第3話は ちん◯、う◯こ、き◯たま といった、見るに耐えない低俗な下ネタのオンパレード なんである。

 

下ネタ以外の部分も、低レベルで幼稚でバカバカしいギャグばかり。良くいえば、笑いどころがシンプルでわかりやすい。

 

下ネタもそうじゃないところも、まるでコロコロコミックに出てきそうなノリだ。

 

もちろん自分も この第3話でハートを撃ち抜かれてどっぷり沼にハマりましたよ。

中身は小学5年生なんで。

 

第2話までは「まぁまぁ面白いから継続して見るか」ぐらいの温度感だったのが、SAWのパロディ部分の「あれやれって言ったのトド松なんだよねー」の台詞にゲラゲラ笑ってから、毎週録画して何回も見るほどの大ファンになりましたよ、えぇ。

 

低俗な下ネタや幼稚で低レベルなくだらねぇ笑いが好きな、中身が小学5年生のままのオッサンは絶対にこの第3話で心を掴まれたはず。自分のように。

 

パロディが多いのは第1話と共通しているが、「ハイキュー」「黒子のバスケ」「弱虫ペダル」と明らかに女性オタクを意識したパロディ元だった第1話に対し、第3話のパロディ元は「アンパンマン」「SAW」「密着警察24時」と、女性ともオタクとも縁もゆかりもないものばかり。

どちらかというと、ターゲットは明らかにオッサンである。

 

そしてこの下ネタや低レベルなネタを一番上手く表現するには、長いエピソードを1本作るよりも、短いネタをテンポよくポンポンと幾つも畳み掛ける方が圧倒的に適している。

なぜなら、レベルの低いギャグはフリからオチまでが非常に短いからだ。

 

だから、第3話は「こぼれ話集」じゃなきゃダメだったんである。

 

ちなみに一番低俗だった「アンパンマン」のパロディ部分は今はもう削除されてしまっていて見れません。

自分たちの想定するターゲット層へ笑いを届けるためなら手段を選ばない、おそ松さん制作陣。最高です。

 

 

まとめ

『おそ松さん』の最初の3話は、それぞれ、

第1話 → 腐女子、女性オタク

第2話 → シュールギャグ好き、ゆる日常系好き

第3話 → 小学5年生男子

に対して、「これはあなたのためのアニメですよ」というメッセージを強烈に届けるためのもの。

 

さらには、最初の3話を見れば、6人それぞれの個性や、置かれている設定、そしてこのアニメがやりたい方向性が、完璧にわかるようになっている。

だから、最初の3話を見て、どれかが琴線に触れたら4話以降も見続ければいいし、触れなかったら見なければいいだけの話。

非常にわかりやすい。

 

そして不思議なことに、3話を見終える頃には、6人の顔がなんとなく区別がつくようになっている…!

 

結果、この作戦は大成功し、『おそ松さん』は一大ムーブメントを巻き起こし、時代を象徴する大ヒットコンテンツとなった。

それも、ターゲットを明確にし、最初の3話をそこに向けて、魅力をわかりやすく伝わりやすくなるように、こだわって作り上げたからだ。

 

ヒットの裏には、必ず作り手の情熱とこだわりと綿密な作戦がある。

 

 

おわりに

ちなみに自分は『おそ松さん』第1期の中では圧倒的に

第7話「トド松と5人の悪魔」

のエピソードが一番好きです。

 

第3話でおそ松さん入りした層には、第7話も刺さるんかな。

 

そのうち『おそ松さん』の魅力を好き勝手書き散らかす記事も書きたいと思います。

 

 

「ひたすら遊んで暮らしてぇ〜!」

 

 

 

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*1:正確には、中身が小学5年生のままの人間、って意味なので、イコールすべての男性と言い換えてもいいかもしれない