ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風
Episodio 28 今にも落ちてきそうな空の下で
アバッキオ…。
いや、泣くよね、コレは。
知ってても泣くよね。
でも今こうして見ると、アバッキオが死んでしまった悲しみよりも、最後に許されて、思いを遂げられて良かったねって気持ちの方が強い。生きながらに死んでいたアバッキオが、最後に意志を持って生きることができて、そして死んでいった。
リゾットもそう。過程を消しとばして結果だけを求めるボスとは対照的に、2人とも結果的には死んでしまったけれども、確実に過程を紡いで意志を遺して逝った。
そして、ジョジョ史上最も深く読者の心に刻まれていると言っても過言ではないこの台詞。
「そうだな… わたしは「結果」だけを求めてはいない。
「結果」だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ………。
近道した時、真実を見失うかもしれない。
やる気もしだいに失せていく。
大切なのは、『真実に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、
いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな。
…………違うかい?」
ジョジョの第5部を初めて読んだのは中学生のときだったけど、当時はこの台詞の良さが全くわからなかった。なんか感動的なように言ってるけど、屁理屈じゃん。犯人が逃げたとしても向かってるからいつかたどり着くって、綺麗事じゃんか。無理があるわ。そう思っていた。
この台詞の意味がわかったのは、社会人になってからだった。
仕事でも、恋愛でも、公私問わず何かを達成しようとしているときや、人間的に成長したくて何かに挑戦しているとき、確かに結果だけを求めていると、近道=ズルをしたくなるし、その過程で大事なものを見失うし、結果が出なければやる気も失せていく。
でも、自分が最終的に向かおうとしている目標をいつも心に据えて、目の前の一つ一つのタスクの結果に一喜一憂せずに、今回の過程で大局的に見て最終目標に少しでも近づいているのか、その目標を達成できるような人間に少しでも近づけたのか、それを見ていると、例え目の前のタスクは失敗したとしても、次頑張ろうって思えるし、少しずつ自分という人間も成長していく。
今は、この名もなき警官の台詞を日々噛みしめている。
今回も第21話に引き続き、ナランチャの慟哭に泣かされた。
ボートを追いかけたときといい、今回といい、
ナランチャの演技が良すぎて、原作では気にも留めなかったところで感動してしまう。
ナランチャの演技が飛び抜けていいというよりも、他のメンバーがあまり感情を表に出すタイプじゃないから(少なくとも、ボートのシーンや今回のシーンで泣いたり叫んだりといった感情発露をするのはナランチャだけ)、アニメになったときにその対比で一際ナランチャに感情移入してしまうんだろうね。
そして今回改めて気付いたんだけど、
アバッキオが最期に握り締めていた破片は、
確実に ジョルノへのメッセージ だよね。
この破片からデスマスクに辿り着けるのは、ジョルノの能力だけだもん。
あんだけ冷たく当たっていたのに、心の底ではジョルノを信頼していたんだな。
いや、そうではなく、自分の「意志を心の中に戻してくれた」のはジョルノだったということに、最後の最期に気付いたのかもしれない。
第5部はジョルノがマフィアのボスになる物語であり、ブチャラティチームのメンバーは、知らず知らずのうちにジョルノに導かれ、黄金の意志を取り戻していく。まるでジョルノこそが彼らのボスであるかのように。
ブチャラティもミスタもナランチャもフーゴもトリッシュも、自分がジョルノに影響されていることを自覚する描写がどこかに挿入されている*1。ところが、アバッキオだけはそれを自覚する描写がどこにもないのだ。いや、ないと思っていた。今日までは。
それこそがこの場面だったんだ。同僚の警官が語った「あの頃の意志を心の中に取り戻している」こと。それがジョルノの影響だってことは読者からすれば自明の理だけれども、アバッキオ自身がそれを自覚する描写はないと思っていた。
でも、言葉では語らないけれども、あの破片を握っていた行動。最後のメッセージをジョルノに託した行動そのものが、自身がジョルノに影響を受けていたことを認める、自覚する描写の代わりだったんだ。
そして最後にこの花を咲かせるアニオリ。
もう、言うことなしだよ。
この花はルドベキアという花で、花言葉は「正義」って解釈をどこかで見たけど、
そうだとしたらとても素敵だと思う。
もちろん、違っていても、また別の素敵なメッセージが込められてるんじゃないかな。
実は、今回何より涙したのはここ。
ここでアバッキオをトップクレジットはズルいよ!!!
最後の最後の粋な演出にまで感動。
諏訪部順一さん、最高の演技をありがとうございました!
さて、次回はいよいよ「彼」が登場。
原作未読者が「彼」の正体を知ったとき、一体どんなリアクションをするのか今から楽しみで仕方がありません。
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