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【漫画】ご近所物語 〜本気で夢を追う姿が眩しい、芸術学院の高校生たちの物語〜

ご近所物語 

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小学生の頃、妹の『りぼん』を読んでいて、衝撃的に面白かった2つの漫画。

「こどものおもちゃ」

「ご近所物語」

 

この2つがなかったら、今でも自分は少年漫画だけを読んでいたかも知れない。

年端のゆかぬ男の子に、漫画はバトルやファンタジーだけじゃなく、現実世界を舞台にした人間ドラマの漫画もこんなに面白いんだと教えてくれた、大事な漫画である。

 

芸術学院が舞台

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「ご近所物語」の一番の特徴であり、最大の面白さは、何と言っても、芸術学院が舞台 であるということ。

芸術系の高校に通う高校生たちが主人公で、趣味や部活ではなく、遠い夢でもなく、職業デザイナー・アーティスト・カメラマンになるために本気で経験を積んでいる若者たちの物語。

(実際、彼らは卒業後、プロの服飾デザイナー・カメラマン・画家・エステサロンオーナー・ぬいぐるみ職人・ゲームクリエイター・アーティストなどの職に就いている)

その学生生活をリアルに覗けるという点が、他の少女漫画と一線を画す面白さを生んでいた。

 

今でこそ、マイナーな部活動や、リアルな職業人や、特殊な専門学生の生態を描いた漫画っていうのは、そこらじゅうに溢れている。

けど、当時の『りぼん』で、そういうのを、こんだけリアリティを以って描いていた漫画なんて、他にはなかった。

作者の矢沢あい先生が大阪モード学園の出身で、明らかに自身の母校をモデルに描いていたから、よりリアルで面白かった。

 

本気で夢を追う若者たちの姿が、こんだけカッコいいってことを教えてくれたのは、この漫画かも知んない。

そう思えるくらい、がむしゃらに目の前にたちはだかる課題に打ち込む実果子たちの姿は、カッコいい。

と、同時に、その姿を傍で見ていて、そんな情熱的な夢が自分にないことにもがき苦しむキャラクターもきちんと描いてくれるから、そこがまた素晴らしい。

 

ご近所物語 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

ご近所物語 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

  • 作者:矢沢あい
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版
 

夢の詰まったアトリエ

「ご近所物語」で忘れられないシーンがある。

メンバーの一人のつてで、大きな空き倉庫を丸々借りられることになった実果子たち。

その倉庫を改装して、自分たちの好きなものを置いて、いつでも自由に出入りして、絵を描いたり、ものを創ったり、構想を練ったりすることができる、自分たちだけの 夢のアトリエ を作り上げる。

 

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そのアトリエにみんなで集まった最初の日を描いたコマに、

"あの日、この場所に、夢に繋がる全てが詰まっている気がした。"

みたいなモノローグが入るんだよね。

 

それが、もう、たまんなくて。

  

秘密基地みたいなアトリエにみんなで集まって、自分の好きなものを思い思いに創っている描写が、楽しそうで楽しそうで羨ましいし、

その姿が、希望で溢れている、自分たちの前には希望しかないって信じ切っている、希望100%な状態なのも眩しい。

でも、そのモノローグが過去形で、この楽園が長く続かないってことを暗示しているのも、切なくてたまらない。

青春の無敵感と儚さを同時に表現しているこの一コマが、未だに胸に焼き付いて離れない。

 

 

漫画の歴史を大きく変えた斬新な描写

この漫画の素晴らしいところは、キャラクターやストーリーなどの中身もそうなんだけど、もう1つ、画力やコマ割りなどの外身の演出面もめちゃくちゃ革新的で、それが面白さを倍増させてたんだよね。

 

矢沢あい先生特有の、スペースではなく太い線で区切られたコマ割りや、実際の風景の写真をそのまま使った背景や、絵の中央に大きく配置されたモノローグなどの、従来の漫画のセオリーを無視した独特の表現は、この漫画から本格化していった気がする。

 

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↑ 白い空白スペースではなく黒の太線で区切られたコマ割り、写真をそのまま使用した背景、中央に大きく配置されたモノローグといった、後の矢沢あい漫画に用いられる手法が、第1話の1ページ目から使われている。

 

今、Google先生で画像検索しても、やっぱりこの漫画の絵って凄いなと思うもん。

とても25年前の漫画とは思えない。

 

この次作の「NANA」と、井上雄彦先生の「バガボンド」と、浦沢直樹先生の「20世紀少年」の3つが同時に出てきたとき、マジで漫画の歴史が根本から変わると思って、ド肝抜かれたもんな。

中身はともかく、表現力という面では、この3つの漫画は従来の漫画とは桁違いに上手くて斬新だった。

 

そんな「NANA」や「パラキス」に続く、矢沢あい先生のオリジナルスタイルが確立されたのが、この「ご近所物語」だ。

 

 

主人公カップルが美男美女じゃない

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主人公カップルがスタンダードなイケメンと美女じゃないってのも斬新だった。

なんせ、主人公かつヒロインの実果子はツリ目のタラコ唇、相手役のツトムはサル顔男子だ。

別にブサイクというわけではないが、従来の少女漫画の主人公カップル像からは大きく外れている。

これも、当時としては斬新で、読んでて面白い点だった。

 

そもそも「美人じゃない主人公」って、画力ないと描けないからね。絵が下手な漫画家がみんな同じ顔になるのと同じで、画力なかったら美人しか描けないから。

特徴的なビジュアルでかつ魅力的なキャラクターを描けるっていうのも、先生の画力の成せる業だと思う。

 

 

サブキャラクターの恋愛模様が面白い

前作の「天使なんかじゃない」も、正直、主人公の翠と晃のエピソードよりも、サブキャラクターのマミリンと瀧川の恋愛の方が見ていて面白かった。

「ご近所」も例に漏れず、主人公の実果子とツトムの恋模様よりも、サブキャラクターの勇介の周りの恋愛エピソードの方が、読んでて面白い。

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実果子はどっちかっていうより恋愛話よりもストイックに夢を追うエピソード担当なんだよね。ツトムとの恋模様も、三角関係になってどうのこうのっていうのは一切なく、どちらかというと「夢と恋愛の折り合いをどうつけるか」みたいな部分が主題だし。

 

対して勇介の周囲は、バリバリの恋愛漫画。バリバリの三角関係。しかも全員美男美女。

主人公カップルが投げ捨てたオーソドックスな少女漫画の成分を、このサブキャラたちが一手に担ってるって感じ。

 

だからこの漫画は、主人公カップルで普通の少女漫画にはない、クセの強い主人公がストイックに夢を追う姿を楽しめるし、サブキャラクターで美男美女の三角関係っていうオーソドックスな恋愛少女漫画も楽しめる。

二重に美味しい漫画になっている。

 

 

まとめ

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芸術学院に通い、本気で夢を追う高校生の姿をリアルに描いていて、その姿が眩しくてカッコよくて楽しそうで儚くて切なくて面白い。

しかもそれが、矢沢あい先生独特の表現力と世界観が爆発している絵と台詞とキャラクターで表現されている。

こんなん面白くないわけがないでしょ。

 

最近読み返した記憶はないけど、多分今読んでも絶対面白い。

読んだことない人、オススメです。

巣篭もりのお供にどうぞ。