今や知らない人はいないであろう『不思議のダンジョンシリーズ』の第2弾として、1995年に発売されたスーパーファミコンのゲームタイトルだ。
発売して20年以上が経つ今でも、中毒者を出すほど多くの人を虜にしているこのゲームの魅力は何なのか。
このゲームの特徴を一言で表すと、こうだ。
クソ難易度高い
おまけに、死ぬと武器も防具もアイテムも全部没収されレベル1に逆戻りするという素敵な心折設計だ。
しかも強制オートセーブになっているので、ミスって死んだからといって慌ててリセットボタンを押そうとも もうどうにもならない。データをロードしても、画面にはただ素っ裸になったレベル1でHP15の主人公が佇んでいるばかりである。
セーブシステムが完備されたFFやDQしかプレイしたことがなかった小学生当時の俺は、父親がこのゲームをプレイしているのを後ろから見ていて、こう思った。
なんて血も涙もない酷いゲームなんだ!
俺はこんなゲーム絶対やらねえ!!
ところが、である。
このゲーム、確かに死ぬと全てを失ってレベル1に戻る。
画面内にいるのはスタート時と全く同じレベル1でHP15しかない主人公だ。
だが、プレイヤーの手元に何も残っていないかというと、そうではない。
このゲーム、死んだら主人公はレベル1に戻るが、
プレイヤーのレベルは上がっているのである。
コントローラーを握っている画面の外の貴方のレベルが上がっているのである。
風来のシレンは非常に戦略性の高いゲームだ。
限られた手持ちのアイテムで、いかにして数々の迫りくる危機的な状況を乗り越えていくか、プレイヤーは頭を悩ませ、知恵を絞ってゲームを進めることになる。
強すぎる敵、意地悪な罠、食糧難。そんなピンチを、頭を使って切り抜けられたり、切り抜けられずに死んだり。その経験は、確実に次の冒険に活きてくる。
この凶悪な特技を持つ敵はこうやって対処すればいいのか。
このアイテムはこうやって使えばいいのか。
こうやって食糧を確保すればいいのか。
このあたりのフロアでこのぐらいまでレベルを上げればいいのか。
モンスターに囲まれたらこうやって乗り切ればいいのか。
急なピンチになったときのためにこういう準備をしておけばいいのか。
持ちきれなくなったアイテムはこういう優先順位で残していけばいいのか。
そういった知恵と知識と経験が、死んでレベル1に戻るたびに、着実にプレイヤーに、貴方自身に身に付いていく。
そして実際に、昨日は10Fまでしか辿り着けなかったのに、今日は11Fに辿り着けている。
このゲームでね~、最初は右も左もわからずにモンスターにボコボコにされていたのに、気がついたら10F、20Fと確実に進めるようになっていくのはめちゃくちゃ楽しいよ!
どうしても15Fぐらいで死んでいたのに、ある日突然一気に23Fぐらいまで到達できた日にゃ、軽くイキかけます。
自己最高記録を更新するのがめちゃくちゃ楽しいんだよね。
そしてはじめてゴールの30Fに到達できたとき、
その喜びはまさに感無量。
未だにこばみ谷を初めてクリアした瞬間はゲーム人生で嬉しかった瞬間BEST10には入るね。
風来のシレンは、まずストーリー本編である最初のダンジョン、
『こばみ谷』が30Fまであって、
その後隠しダンジョンが3つ、
『食神のほこら』『掛け軸裏の洞窟』そして『フェイの最終問題』が、
それぞれ99Fまであります。
攻略サイトなんか見ると、「『こばみ谷』はチュートリアルで、隠しダンジョンからが本番」なんて書かれてるけど、初めてやったらまず絶対こばみ谷でめちゃくちゃ苦戦するよ。「これでチュートリアル!?ふざっけんなよ!!隠しダンジョン99Fなんて絶対無理無理無理!」って思う。
でも、フェイの最終問題に挑戦してると、「あぁ、確かにこばみ谷はチュートリアルだったなぁ」って思う。
俺は『こばみ谷』をクリアするのにめちゃくちゃ苦労して、こばみ谷30Fをクリアした時点で燃え尽きて一回シレンを止めた。
でも今はこばみ谷を1発でクリアする自信がある。(実際にここ数年で1からシレンをプレイする機会が2、3回あったけど、全部こばみ谷は1発でクリアした)。スタートは当時と同じ、レベル1でHP15のシレンにもかかわらず、だ。
それだけプレイヤーが成長するゲームなんだよね。
あんときゾーマみたいに感じたこばみ谷30Fは、今の俺にとってはスライムくらい弱い。それはつまり、俺のレベルが確実に上がってるってことだ。
そしてこのゲームのもう一つの魅力。
最後のダンジョン『フェイの最終問題』99Fを目指すのは死ぬほど面白い ということ!!
この『フェイの最終問題』はこばみ谷に何重にも輪をかけて凶悪で理不尽で極悪非道で難しい!
なんせ、36Fを過ぎると、こちらのHPは最大で250しかないのに、盾を装備していない場合、ほとんど全てのモンスターが確実に一撃で255のダメージを与えてくるのだ。
つまりパンチ一発でシレンは死ぬ。
死んだら当然、お約束のレベル1素っ裸に逆戻りだ。
盾を装備していても、普通の盾なら2、3発で死ぬ。
36Fまでにめちゃくちゃ強力な盾を準備しないとお話にならないのである。
さらに、60Fからは、フロアのどこにいても届くダメージ50の炎を吐いてくるドラゴンが全ての階で登場する。5歩歩いたら死亡である。場合によっては2匹以上いることもある。
このゲームのモンスターは隣まで近づくか悪くても同じ部屋にいない限り攻撃が届かないという常識をぶっ壊すとんでもないチート野郎である。
60Fまでにこいつの対処法を用意しておかないと絶対にクリアできない。
これらの凶悪すぎる関門を潜り抜け、見事99Fまでクリアしたときの喜びも、こばみ谷より遥かに大きい。
『フェイの最終問題』は、こばみ谷より遥かに難しい分、アイテムの種類も比べ物にならないくらい多く、戦略を立てる楽しみや考える楽しみも数十倍に増大している。
「こばみ谷はチュートリアルで隠しダンジョンからが本番」というのは、決して難易度だけの話じゃない。「楽しさ」もまた、『フェイの最終問題』が本番なんである。
俺は『フェイの最終問題』にハマりすぎて、普通にクリアするだけじゃ飽き足らず、分裂・強化・合成の壺なしで99Fクリアまで達成した。これがいかにすごいことかは、シレンプレイヤーならわかってくれるはず。いや、シレンプレイヤーなんて掛け軸裏の洞窟99F到達してる猛者ばっかりだからな。大して驚かれないかも。
壺なしクリアも目指したけど無理ゲー過ぎてやめました。掛け軸裏の洞窟99F到達とどっちが難しいかな。
とにかく、困難に何度も挑戦して、知恵と勇気と戦略で危機を突破するのが好きな人は、間違いなくハマるよ。
格好良く言ったけど、要はドM向けのゲームってことだね。
SFC版とDS版が出てるけど、両者は特に散々話題にした『フェイの最終問題』の内容にかなり大きな違いがあるようなので、購入するときには注意。どちらも一長一短らしいので、どちらを買うかはその人の好みによるだろうけど。
俺はやっぱり、荒削りだけど刺激的な難易度のSFC版をオススメしたい。
風来のシレンはいいよ!
あなたもぜひ、フェイの最終問題99Fを目指そう!!