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【漫画】チ。-地球の運動について-【感想】

チ。

-地球の運動について-

 

 

真実を知りたいという欲望は誰にも止められない

15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いた物語。

実際には歴史上で地動説が極端に迫害されたという事実はないらしく、この漫画のように地動説を研究していただけで、残酷な拷問を受けたり、即座に死刑になったりすることはなかったらしいので、あくまでフィックションの物語だ。

 

とはいえ、地動説じゃなくても、歴史上で様々な学問が迫害を受けたり禁じられたりして、それにも負けずに命懸けで「真実を知りたい」と学び続け、戦い続けた人たちはきっと世界中に沢山いたはずで、それを想うとあながち全てがフィックションだとは言い切れないのかもしれない。

 

人間の「知りたい」「学びたい」「真実を追い求めたい」という好奇心、探究心、欲望はすさまじいもので、どんなに迫害しようと抑圧しようと、必ずどこかの誰かから湧いてきて、いつかはその閉ざされた扉をこじ開ける。

その人間の信念の強さに、何度も感動される漫画だ。

 

バデーニとオクジーの物語がとにかく良い!

『チ。』は大きく分けて、全部で3つの章に分けられている。

1巻、第一章はラファウの物語。

2~5巻、第二章はバデーニとオクジーの物語。

6~8巻、第三章はドゥラカの物語。

 

三章とも良く出来てるし、めちゃめちゃ感動する場面も多いけど、特に第二章のバデーニとオクジーの物語が最高に良い!

博学で独善的な修道士であるバデーニと、学もなく身分も低いネガティブな代闘士のオクジー。本来は決して交わることのなかった立場も性格も正反対の二人が、地動説を通じて出会い、互いに影響し合い、最後には学問とは何たるかを語り合うまでになる、その変化の過程がとんでもなく素晴らしいのだ。

 

一見冷たく見えるバデーニの内に秘めた優しさもいいし、現世に何一つ期待していなかったオクジーが、「知」に目覚め、「生きる意味」に目覚め、目線も顔つきもどんどん変わっていく様子はたまらない。

オクジーが紡ぐ言葉は、知ること、学ぶことの意味や素晴らしさと、人間が生きる意味とは何なのかということを、僕たちに教えてくれる。

 

この二人の物語はラストの終わり方まで含めてめちゃくちゃ良いので、ぜひとも読んでほしい。

 

紡がれる言葉の重さと深さ

この漫画は登場人物が吐き出す台詞の内容がとにかく深い。

言葉の一つ一つが、普段我々が何気なく見過ごしている、宗教、科学、学問、経済、人生といった様々なものの真理を的確に突いてくるし、その表現の一つ一つに何度も思わずハッとさせられる。

 

科学とは、学問とは、知ることとは何なのか。

神とは、信仰とは、宗教とはどういうことなのか。

人が生きる意味とは、人生の目的とは。

受け継がれる意志とは、そして歴史とは一体何なのか。

 

命懸けで信念を貫いて生きる登場人物たちが紡ぐ言葉が、他の漫画にはない異質な感動を与えてくれる。

 

最後の終わり方はちょっと残念

最初から最後まで一貫して感動したし面白かったが、最後の最後、最終回の終わり方だけはちょっと残念だった。

 

正直、最後は世の中に地動説は広まり、スカッとして終わるんだと期待して読み進めてしまったのだが、最終回にいたっても未来の学者に小さなブレイクスルーを与えただけで終わってしまった。

まぁ、史実でもまだコペルニクスすら登場してなくて、ガリレオの宗教裁判を経て地動説が完全に広まるのはずっと先のことだから、それ自体はしょうがない。

 

にしても、最終回にいきなりパラレルワールドと思しき謎の展開をブチ込んできたのは、ちょっと余計だったんじゃないかなぁと思ってしまった。

① 第一章で死んだはずのラファウが大人の姿で登場

② 今までP国と伏せられていたのがポーランド王国となっている

③ 本編に登場した「地球の運動について」は登場している

①と②を見ると、最終回は本編とは別の、もしかしたら我々の生きる史実の世界の話なのか?とも思えるんだけど、③でちゃんと本編ともリンクしている。

このあたりの展開の意味も、こういった謎めいた最終回にした理由もわからず、ちょっとモヤモヤの残る最終回になってしまったのは残念。

第三章の終わり方があぁだったこともあり、もっと消化できる最終回にしてほしかったというのが正直なところ。

 

おわりに

とはいえ、全編通してめちゃめちゃ面白かったし、読めて良かったと思える漫画でした。

特に登場人物たちが生み出す台詞の一つ一つ、紡ぐ言葉の一つ一つが素晴らしすぎて、何度も読み返したくなる。

 

ちょっと展開が重いけど、必ず読んで良かったと思える漫画なので、ぜひとも読むことをオススメします。