ぼくらの
2003〜2009年連載、作者は 鬼頭 莫宏 。全11巻。
2007年にテレビアニメ化され、OPテーマがニコニコ動画でそこそこバズったので、初期のニコ厨の人はもしかして知ってる人も多いかもしれない。
なかなかにショッキングで、かつメッセージ性が強くて、すごく面白い漫画なので、今回はこの漫画をご紹介します。
そのロボットの動力は、操縦者の命!?
夏休みに自然学校に参加した15人の中学1年生の少年少女たち。彼らは、探検に行った海沿いの洞窟の中で出会ったココペリという男に誘われ、巨大ロボットを操縦して地球を侵略する巨大怪獣と戦う という操縦者に選ばれてしまう。
地球を守るヒーローになれる!?と喜び勇んで、見事1体目の怪獣を撃退した少年たち。ところが…
そのロボットは、何と、操縦者の命を動力として動くロボット だったのだ。
しかも、1人の命で動かせるのは1度きり。
つまり、
1度操縦すると、死ぬ。
という、とんでもないロボットだったのだ。
そして、既に契約を終えてしまった彼ら15人が、その死の運命から逃れる方法は、存在しない。
自らの死の運命に直面し、泣き叫ぶ者、逃げ惑う者、達観する者、様々だったが、やがて彼らは、愛する家族や友人を守るため、自分たちの死の決定を受け入れて、戦うことを決意する。
だが、そんな彼らを待ち受けていたのは、
さらに残酷な戦いのルールだった…。
死を前にした少年少女たちの、閃光のような生き様
この漫画の最大の魅力は、何と言っても、死を前にした少年少女たちが、最後の最後に見せる、メッセージ性の強いその 生き様 だ。
ワク、コダマ、ダイチ、ナカマ、カコ、ウシロ、カナ、モジ、アンコ、カンジ、マコ、コモ、チズ、マチ、キリエ。
彼ら15人は、大小の差はあれど、それぞれが複雑な家庭事情や、過去のトラウマやコンプレックスや、特殊な生い立ちなどを抱えている。
人生の中で長い間悩んできた、自分の人生や、家族や友人についての向き合い方について、死を前にした最後の最後の時間で、自分なりの答えを出し、それを行動にして見せるその姿は、読んでて凄まじく胸を打たれる。
特に、3番目のパイロットであるダイチと、4番目のパイロットであるナカマのエピソードは、読み応え十分。
最初の2人、ワクとコダマは自らの死の運命を知らずに戦うので、初めて「自分が死ぬ」ということを知った上で戦う2人のパイロットが、家族に対し、友人に対し、そして自分自身の人生に対して、どういう結論を出し、そしてどういう行動に出るのか。
この部分は、ぜひ読んでいただきたい。
その次に来るカコとチズのエピソードも中々に エグくてショッキング です。
そしてマコ編で明かされる衝撃の秘密…!
とにかく最初の数巻の時点で衝撃の連続が半端ないです。
初っ端からフルスロットルなんで、普通にオススメできます。
マコ編で明かされる、さらなる衝撃の秘密…!
自分が必ず死ぬ というだけでも過酷すぎる運命なのに、
彼らが背負う残酷な運命はそれだけではないです。
中盤、マコというキャラクターがパイロットになるエピソードで、
この戦いのさらなる 残酷な真実 が明かされます。
これがまた衝撃的なんですよ…!
一体、この戦いに隠された もう一つの真実 とは何なのか。
それはぜひ、皆さんがご自身で読んで、その衝撃を目の当たりにしてください。
アニメはイマイチ、小説は小説で面白い
アニメ
この作品、アニメ化もされていますが、アニメは一言で言うと、
雰囲気は最高。
プロットはクソ。
です。
『ぼくらの』特有の、重苦しくて切ない雰囲気の再現は最高です。
特にオープニングとエンディングの曲は全て素晴らしすぎる!!
原作の空気感をあれほど体現したオープニングとエンディングも中々ないでしょう。歌詞が原作に逆輸入されたほど。最高です。
でも、プロットとストーリーの改悪は最悪でした。
特に終盤の展開は原作ファンからしたら目も当てられない。
前半も、自分が一番好きなナカマのエピソードが丸々削られていたり、カコとチズ編の衝撃的な展開が全部マイルドなものに改変されていたりと、改悪が目立ちます。
ただ、雰囲気の再現はホント最高です。
なので、原作を全巻読破した後、アニメを2,3エピソードだけ見てみるというのをオススメします。
特に原作の展開を忠実に再現したダイチのエピソードはめっちゃいいので、そこがオススメ。(普通に泣きました)
第9話です。
アニメはHuluで全話視聴できます。
小説
小説も発売されています。
小説は原作と展開が全く違いますが、それが逆に面白いです。
この戦いのルールを最大限に活かした展開が、原作とはまた違った魅力を作り出していて、「なるほどな。こういう『ぼくらの』もありか」と思わせてくれます。
キャラクターのスポットの当たり方も原作とはまるで違います。
原作では自らの運命を知らずに退場し、ほとんど出番のなかったワクは、出番は増えているものの更に残酷な運命になってしまっています。(何も知らずに死んだ方が幸せだったんだな…と思ってしまった…)
逆に キレイなコダマ のエピソードは素晴らしいです。普通に感動します。
あとは例えば、原作ではモジ編の脇役だったツバサがパイロットとしてメインキャラクターになり、代わりにモジが脇役になったり、メインキャラではなくなったダイチが思わぬ役どころで登場したりといった逆転現象も起こっています。
この辺りも普通に見どころです。
原作読破済みなら絶対楽しめると思うので、漫画は読んだけど小説はまだ、という方には、ぜひ購読をオススメします!
※ 注意:
この先、軽度のネタバレあり
小説アニメ両方に言えること
この作品は複数の並行世界線をテーマにした作品でもあるので、アニメも小説も、あの原作漫画を映像化・文章化したものではなく、あくまで原作のウシロたちとは 別の並行世界のウシロたちの物語だ と考えて見たり読んだりすると、より楽しめるかもしれません。
というか、小説はそうとしか読めない作りになっているので割り切って読めるけれども、アニメは下手に途中まで展開が一緒なために、不満が噴出してしまうのかもしれない。
同じくジアースというロボットと15人の少年少女たちを題材にした3つの物語は、全て、全く異なる結末を迎えます。
どの結末が好みか、それは人によって違うと思いますので、ぜひ3つとも全て見届けてみてはいかがでしょうか?
結末について
この手の漫画はどうしても仕方がないですが、やはり前半から中盤が一番面白いのは否めないです。
とはいえ、じゃあ 某20世紀少年のように 結末がクソかというと、そんなことはないと思います。
少なくとも、自分は、この結末、割と好きなんですよね。
全ての秘密や大枠の黒幕とか戦いの仕組み自体が全部明らかになる、とかは期待しない方がいいですが、継承戦のパイロットがあの人で、新しいコエムシがあの人っていう結末は、自分はめっちゃ好きです。
少なくともアニメよりはずっといい。
小説は逆に、終盤のどんでん返しの方が面白いかも。
おわりに
『ぼくらの』普通にオススメの漫画です。
色褪せない名作です。
原作未読の方は原作漫画を、
原作読破済みの方はアニメと小説を、
読んでみてはいかがでしょうか?