とにかく主人公二人が魅力的な少女漫画。
俺は、少女漫画は付き合うまでが面白いと思っていた。どの漫画も、付き合うまではめちゃくちゃ一途だったヒロインが、付き合った途端あっちにふらふらこっちにふらふらし出して、てめぇふざけんなよ今までの純粋さは何だったんだよ俺の応援を返せコラとイライラしながら読む羽目になるか、そうでなかったら何らかの鬱展開が起こるかどっちかだった。それだけ、付き合っちゃった後に話の盛り上がりを作るのは難しいんだろう。
ところが、この漫画は割と序盤で早々にくっ付いちゃって、漫画の大半が付き合い始めた後のフェーズにもかかわらず、最後までむちゃくちゃ面白い。しかも、ヒロインの女の子も男側の子も誰かに気持ちがブレることなくラブラブなままなのに、加えて気が滅入るような鬱展開が巻き起こるわけでもないのに、最後までむちゃくちゃ面白い。
それはなぜか。
間違いなく、主人公二人のキャラクターがいいからだ。
ジョジョの荒木飛呂彦も、著書『荒木飛呂彦の漫画術』の中で、「魅力的なキャラクターはそれ一本で漫画が成立する最も強力な武器」と言っている。逆に、どんなに優れたプロットやストーリーがあっても、主人公が読者に「こいつが来週どうなるのかが見たい!」と思わせられなければ、何の意味も持たない。例えば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、主人公が両さんだから、両さんの破天荒ぶりやハチャメチャが見たいから、読者は来週もそのまた次の週も読み続けるのだ、と。
女性主人公の 長嶋 晴菜 は、どこまでも前向きで明るく、エネルギーに満ち溢れていて、何事にも一生懸命で、自分に悪意を持ってる人間にすら笑顔で肯定的にとらえ、大好きな人のためならば自分が傷つくことは厭わない、自分に正直で、努力家で、素直で、優しさ溢れる、パワフルな女性。
男性主人公の 小宮山 ヨウ は、一見ぶっきらぼうで無愛想だが、根は晴菜以上の優しさの塊で、気配りができて、愛情に溢れていて、照れ屋で、純粋で、自分の好きな人をとても大事にする、強さと可愛さを併せ持っためちゃくちゃにピュアな男性。
もうこの二人のやりとりを見てるだけで、楽しいし面白いし癒されるしキュンとするから、付き合った後盤石な二人を延々見続けていても飽きないんだろう。
特にヒロインの 長嶋 晴菜 は俺の大好きなキャラクターだ。『君に届け』の 黒沼 爽子 は、こんな女性と付き合いたいという意味で大好きな理想のキャラクターだったが、長嶋 晴菜 は俺自身がこんな人間になりたいという人間的な意味での理想のキャラクターだ。あんな風にエネルギーに満ち溢れていてポジティブで優しい人間に俺もなりたい。
この漫画に限らず河原和音の描く漫画のキャラクターはすべからく底なしに好感度が高い。『俺物語』のキャラクターもそうだし、『先生!』『青空エール』もストーリー的にはジメジメした側面もあるが、登場するキャラクターはみんな真っ直ぐで爽やかだ。
『高校デビュー』はオススメの漫画だ。
でも、それだけでなく、河原和音の描く漫画は全てオススメできる。
あと、この漫画、札幌が舞台なんだよね。
だから、馴染みのある光景がそこかしこに出てきて、そこんとこも好き。