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【ネタバレ考察】魔法少女まどか☆マギカ の 5人の役割について

魔法少女まどか☆マギカ

 

4クール、全53話で面白いアニメ。

2クール、全24話で面白いアニメ。

そういうアニメは沢山ある。

 

魔法少女まどか☆マギカ』がすごいのは、

たった1クール、全12話で、

これほど面白いアニメを作り上げているという点だ。

 

24話も与えられれば、ノリと勢いで何とかなる部分もあるけど、

たった12話で視聴者を唸らせる盛り上がりのあるアニメを作るには、

ありとあらゆる計算尽くな仕掛けが必要だ。

 

そして、『まどマギ』はこれがめちゃくちゃ上手い。

12話という話数の使い切り方、

5人という限られたキャラクターへの役割分担が、

これ以上ないほど完璧に計算されてる。

 

 

実際、『まどマギ』のストーリーの各フェーズの中で、

5人のキャラクターはそれぞれどのような役割を演じているのだろうか。

 

まどマギ』のストーリー構成は大きく4つのフェーズに分かれている。

 

 

① 起

まずは1~3話の「物語の導入部分」。

 

ここでは 巴 マミ が、

物語の中では まどか と さやか という2人の主人公を、

物語の外に対しては 視聴者 を、

それぞれ魔法少女の世界へと誘っていく。

 

ここでの立ち位置は、

まどか・さやか =「一般人」「視聴者と同じ目線」「狂言回し」

マミ =「"魔法少女"という特別な存在」

である。

 

そして、3話の最後で、マミが自らの命と引き換えに、まどかとさやかの2人と、そして我々視聴者を、本当の魔法少女の世界へと引き摺り込んでくる。

 

 

② 承

続くは4~9話の「一般的な魔法少女の顛末を描いた部分」。

 

この部分こそが、この物語の本編である。

と、同時に、この部分はまだ、世界設定の長い長い説明に過ぎない。

 

というのも、

まどマギ』のストーリーのどこが本編か?

というのは、2つの捉え方ができて、

「普通の一般人の世界から見た "魔法少女" という特別な存在の物語」という視点で見た場合、この4~9話こそが本編になるが、

「普通の魔法少女の世界から見た "暁美ほむら" という特別な存在の物語」という視点で見た場合、4~9話は世界設定の説明に過ぎなくて、10~12話こそがこの物語の本編、ということになる。

 

いずれにせよ、このパートは「この世界の魔法少女は一般的にどのような道筋を歩むか」というモデルケースを、魔法少女に就任するところから、魔女になって討ち倒されて無残に死ぬところまでを、ノーカットで視聴者に見せつけて説明するパートになっている。

 

このパートの犠牲者主人公は 美樹 さやか 

 

そして、彼女を見る視点として、「一般的な普通の人間」の他に、「一般的な普通の魔法少女」が必要になってくる。「一般的な普通の人間」の目線はまどかが担ってくれるが、「一般的な普通の魔法少女」の目線を担うキャラクターがいない。巴マミは退場してしまったし、暁美ほむらはこの後にまだ別な役割を負っているためにこの役を演じることができない。

 

そこで登場するのが 佐倉 杏子 

 

彼女は、美樹さやかの物語、つまり、魔法少女がどのようなおぞましい結末を迎えるのかを、同じ魔法少女の目線から覗くために、必要不可欠な存在である。さやかの物語は、「魔法少女じゃない普通の人から見たらどう見えるか」と「同じ魔法少女から見たらどう見えるか」の2つの目線が必要になる。それを、まどかと杏子がそれぞれ担ってくれる。

 

だから、杏子はさやかの物語のみに必要なキャラクターである。その証拠に、さやかが退場するのと一緒に彼女も退場してしまう。

 

さやか = 主人公

まどか = 魔法少女ではない普通の人間の目線から物語を眺める人

杏子 = 同じ魔法少女の目線から物語を眺める人

 

 

③ 転

そして、10話の「魔法少女という世界での "暁美ほむら" という主人公の物語」。

 

まどマギ』を、さやかたち 魔法少女という集団 が主人公の物語 ではなく 暁美ほむらという個人 が主人公の物語 ととらえたときには、この10話こそが正真正銘の本編となる。

 

この10話では、今まで謎に包まれていた 暁美 ほむら が、一転して「主人公」となり「視聴者の目線」となり「狂言回し」となる。逆に、今まで「普通の人」であり「視聴者の目線」であり「狂言回し」だったまどかが、「ヒーロー」であり「特別な存在」へと入れ替わる。この逆転現象は本当に上手い。

 

ほむら = 「主人公」「視聴者の目線」「狂言回し」

まどか = 「ヒーロー」「特別な存在」

 

 

④ 結

11話と12話は、もうぶっちゃけ物語を畳むためだけのパート。

言ってみれば「オチ」。

正直多分、4~9話までのさやかのパートと、10話のほむらのパートで、作者の描きたい部分は終わってる。

あとは、どう話を着地させるか。どうオチを付けるかだけ。

 

そしてそのために、そのためだけに、主人公である 鹿目 まどか にようやく役割が与えられる。

このパートでのまどかの仕事はたった一点のみ。

デウス・エクス・マキナ機械仕掛けの神)」だ。

 

デウス・エクス・マキナの意味が何なのかは各自調べてほしいが、調べれば分かる通り、この言葉はこのパートのまどかのために作られたんじゃないかと思うほどにしっくりくる言葉である。要は 鹿目 まどか はこの着地不能な壮大な物語を無理矢理終結させるために最初から配置された舞台装置だったのである。

 

ほむら = 狂言回しとしての主人公

まどか = デウス・エクス・マキナ

 

 

まとめ

面白いのは、マミ、さやか、杏子、ほむらに劇中で与えられた役割は一つだけなのに対して、まどかには章ごとにそれぞれ異なる役割が与えられているという点である。1~9話では普通の人目線での狂言回し、10話では主人公にとってのヒーローであり特別な存在、そして、11~12話では物語を終わらせるための舞台装置。

 

巴マミは、視聴者と主人公を物語の世界へと「巻き込んでいく」まさに

美樹さやかは、物語の一番の骨格を一番長い尺を取って演じ切る、まさに「物語の」。

佐倉杏子は、美樹さやかの物語をにぎやかすためだけに用意された、まさにサクラ=

暁美ほむらの行動こそが、この長い物語の起点=物語の夜明けとなる、まさに(あかつき)。

そして、鹿目まどかは、この着地不能な物語を終わらせるための、まさに(かなめ)。

というのが5人の名前の由来なんだと思うんだかどうだろうか。

 

これほど綺麗に、12話のストーリーの1話1話に、起承転結の各部位を割り振り、

これほど綺麗に、5人のキャラクターに物語上の役割を与えて、

たった1クールでストーリーを流れるような1本の線にして表現し切ったのは本当に凄い。

 

魔法少女まどか☆マギカ』、本当に完成された物語だ。