言わずと知れた名作RPG。
主人公が父親に連れられて旅をする幼少期から、
自身が父親になり息子と共に魔王を倒す青年期まで、
1人の男の人生を見事に描いた、名作中の名作RPGだ。
6歳から、おそらく30歳前後まで、
実に20年以上の時間経過を、
こんなに上手く表現したゲームは他にはないし、
今後も出ることはないんじゃないかな。
この、「人生の時間経過」を表現するために、
ドラクエⅤには実に様々な手法が用いられている。
例えば、6歳のときに住んでいた町、サンタローズに、
大人になってから再度訪れたとき。
「なんか…、こんなに狭かったっけ?」と思ったプレイヤーは、
大勢いたはずだ。
これ、実は、大人になってからのサンタローズのマップは、
子供のときのサンタローズより、一回り小さく作り直されている。
これは、現実に起こる、「子供のときに住んでいた街に大人になってから行くと、自分の記憶よりも小さく感じる」という感覚を表現するために、製作者の堀井雄二がわざわざマップをもう一つ用意したのだ。
実際、子供の身長は大人の半分しかないから、
子供の世界は大人から見た世界の2倍、広く感じられている。
俺も、幼稚園のときに住んでいた家に高校生になってから行ったとき、
小さい頃には大海原のように見えていた広い広い畑が、
めちゃくちゃ小さい畑だったことに気付いて驚いたことがある。
そんな、現実世界で仄かに感じる感覚を、
ゲームの中で、それも、SFC時代の拙いグラフィックで表現するなんて、
本当にスゲェよ。
この、ドラクエ5の人生表現に、最も貢献しているもの、
それは、音楽 だ。
人生の全てのゲーム曲のなかでBEST20を決めるとしたら、
ドラクエⅤの曲で、その中に入る曲は一曲もない。
魂を揺さぶる、飛び抜けた名曲が存在するわけじゃないんだ。
その代わり、全ての曲が統一して作り上げている、
ゲーム中の「空気感」は、
数多くのゲームの中でもトップクラスに洗練されている。
フィールド、塔、ほこら、洞窟、戦闘、城、
全ての場面で流れる曲が、
どことなく寂しくて、どことなく不気味で、どことなく懐かしい。
一曲二曲じゃなく、「全曲に」共通してこの感覚を持たせるのは、本当にすごい。
もしかしたら、ゲーム史上に残る名曲を一曲登場させるより、
遥かに難しいことなんじゃないか。
ゲームは視覚から入ってくる情報が8割だと思われがちだが、実は違う。
本来人間は、ある場所に立ってある行動を取っているとき、
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の全てを使って、
周りの空気感を感じ取っているし、記憶している。
だけど、ゲームで、それもSFC時代のゲームでその感覚を再現しようとしても、
プレイヤーへは視覚的な情報しか与えることができない。
五感のうち一つの感覚しか補えないから、わずか2割しか表現できていないことになる。
じゃあ、残りの8割をどうやって表現するのか。
それを、音楽 に託すのである。
主人公がその場所に立ったときの、
温度、湿度、匂い、自然の音、風のそよぎ、地面の感触、空気の味、
街の喧騒、日光の暖かさ、洞窟のひんやりとした空気、夜風の気持ちよさ、
そういったものを全て、なるべく音楽に表現させるのだ。
だから、ゲームにおいて音楽が表現しているのは聴覚だけではない。
視覚以外の全て、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、そして感情を、
音楽によってプレイヤーに感じさせているのだ。
そして、この表現が、ドラゴンクエストは抜群に上手い。
これまでのシリーズで培った音楽による高度な「空気感の表現技術」が
あったからじゃないだろうか。
と、俺は思う。
ある場所で、とある青年からかけられる、この言葉
「坊や、お父さんを大切にしてあげるんだよ」
「どんなツライことがあっても、負けちゃダメだよ」
時が経ち、ある場所で、とある少年から返ってくる、こんな言葉
「うん、どんなにツライことがあっても、ぼくは負けないよ!」
この2つの言葉を思い出すたびに、泣きそうになる。
ドラクエⅤ、本当にいいゲームだよなぁ…!
~バティゲームランキング 第2位『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』~
ドラゴンクエストV 天空の花嫁 (DQ VIII プレミアム映像ディスク同梱)
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2004/03/25
- メディア: Video Game
- 購入: 8人 クリック: 49回
- この商品を含むブログ (205件) を見る